「かいよう病」とは、植物の葉や果実、茎に褐色や白色のコルク状の斑点や亀裂など、特有の症状を引き起こす病害です。かいよう病は作物の収穫量や品質を大きく損ねます。本記事では、かいよう病の症状、発生要因、そしてその対策について解説します。
かいよう病の症状
かいよう病は細菌によって引き起こされる病害です。植物の種類や感染状況によって多様な症状を示しますが、一般的に葉に円形〜不整円形の病斑などを形成したり、果実表面にかいよう(潰瘍)症状ができたりといった特徴があります。
以下に代表的な例として、「カンキツかいよう病」と「トマトかいよう病」の症状を紹介します。
また以下のサイトにはかいよう病の画像が掲載されています。
カンキツかいよう病
柑橘類に広く発生します。オレンジやグレープフルーツ、レモンやナツダイダイで激しく発病する一方で、ハッサクやポンカン、ヒュウガナツなどではほとんど発病しません(最も発病が少ないのは、ユズ、キンカン)。
カンキツかいよう病は葉や果実、枝に褐色の病斑を形成します。初期の病斑は濃緑色の水浸状で、円形。病斑が拡大するにともない、表面にザクロのような亀裂が生じ、中央部が徐々にコルク状に硬化します。枝と果実の病斑には見られませんが、葉の病斑では周縁が黄色になり、これが特徴的な目印となります。
葉や枝の病斑は春から発生し、多発すると落葉を引き起こします。また、果実に発生した病斑は商品価値を著しく損なうため、農業経営に深刻な影響を及ぼします。
トマトかいよう病
その名の通り、トマトに特化して発生します。発病初期は、中位から上位の葉に淡褐色の脱水症状が発生します。病気が進行すると(発生後3〜4日ほど)葉の黄化や、周縁の巻き上がりが発生し、最終的には葉が褐変して枯死します。
トマトかいよう病では、
- 葉、茎、果実の表面に病気が発生し、小斑点を形成する場合
- 維管束などの内部組織に病気が発生し、組織が崩壊する場合
があります。
葉や茎、果実に病気が発生した場合、それらの表面に白色または褐色の小さなコルク状斑点が形成されることがあります。
内部組織に病気が発生した場合、初期には下位の葉が葉柄とともに垂れ下がる症状や葉身が周縁からしおれ、乾燥して巻き上がる症状などが見られます。病気が進行すると、葉脈間が黄化、葉全体が褐変し、枯死します。症状が重度になると、被害を受けた株の茎などが中空になることもあります。
発生要因
かいよう病の発生要因には以下のものがあげられます。
一次伝染源
前年に形成された感染枝や病葉には病原となる細菌が潜んでおり、それが発生要因となります。
被害を受けた葉や果実が土中に混入すると、その中に潜む病原細菌は土の中で越冬します。また枝や幹に生じた病斑中の細菌が滲み出て、越冬芽に侵入することもあります。
春先に気温が上昇すると病原となる細菌が増殖します。これらの細菌は雨によって運ばれます。そのため、降雨が続く環境では雨滴を介して病原細菌が拡散します。
傷口感染
病原細菌は、植物の気孔や微細な傷口から侵入します。例えば、強風や台風による風傷、カンキツかいよう病であればミカンハモグリガなどの害虫による食害が感染を助長します。特に未熟な葉や果実は感染しやすい状態にあります。
環境要因
温暖で多湿な気候条件は、かいよう病の発生を促進します。
カンキツかいよう病の発病適温は20~30℃、トマトかいよう病の発病適温は25~28℃とされており、この範囲の気温で雨が多い時期に病気が急速に拡大することが知られています。また、排水不良や高湿度環境も発病リスクを高める要因です。
かいよう病への対策
一次伝染源を取り除く
まず、一次伝染源を取り除くことが最も重要です。病気に罹った枝や感染した果実などを剪定して除去し、一次伝染源を減らします。特に夏枝や秋枝の病斑が翌年の春に伝染源となるため、冬季の剪定が重要です。
カンキツかいよう病の場合は、傷口感染を助長する原因となるミカンハモグリガの防除にも努めます。
またトマトかいよう病は種子伝染するため、消毒済みの種子を購入するか、種子消毒を行います。汚染した土や資材からも感染するので、育苗用土は新しい物を購入し、発病圃場では資材の消毒も行います。
薬剤散布を行う
適切な時期に適切な薬剤を散布することも有効です。カンキツかいよう病の場合には、発芽期となる春先や花弁が落下した直後、梅雨の時期や秋の初めの長雨が降る時期などに薬剤を散布すると効果的です。強風を伴う風雨や台風の襲来が予想される場合には、事前の薬剤散布、または台風直後の追加散布が推奨されています。
防風対策を行う
かいよう病の病原細菌は、植物の微細な傷口から侵入します。強風による傷感染を防ぐために防風ネットなどを設置します。
水の管理を行う
病原細菌は水を好むため、排水性を向上させることで、高湿度環境を避けます。また、過剰な灌水を控え、葉や果実に水滴が長時間残らないように注意します。
参考文献
- 米山伸吾他『新版 仕組みを知って上手に防除 病気・害虫の出方と農薬選び』(農文協、2022年)
- 夏秋啓子『植物病理学の基礎』(農山漁村文化協会、2020年)
参照サイト
(2024年11月20日閲覧)