【植物の病害あれこれ】尻腐れ病について。尻腐れ病の原因や防除法を紹介

【植物の病害あれこれ】尻腐れ病について。尻腐れ病の原因や防除法を紹介

尻腐れ病とは生理障害の1つで、果実の下方が黒く変色し、果実が大きくなるにつれて変色した部分が陥没していくのが特徴です。

病原菌などによって発生するものではなく、土壌中のカルシウム不足や窒素過多、土壌の酸性化や乾燥によって、カルシウムがうまく吸収されなくなることが原因です。

 

 

尻腐れ病の特徴

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発生初期には、果実の花があった部分(花痕部)に褐色の小斑が生じることが多いです。症状が進むと、冒頭で紹介したように果実の下方が黒く変色します。症状の程度が軽いとそのまま大きくなって成熟しますが、重症になると果実の半分以上に症状があらわれ、大きくならず着色不良となる場合が多いです。

尻腐れ病が発生しやすい条件

一般的に果実のカルシウム欠乏が原因とされています。

植物にとってカルシウムは重要な役割を果たしています。ヒトの場合、カルシウムは筋収縮や血管の収縮・拡張といった「機能調節」と、骨や歯を形成する「構造維持」の役割を担いますが、筋肉や血管のない植物においてもカルシウムは同様の役割を担います。

たとえば、植物ホルモンや環境の変化、病原菌に感染した時など、細胞質ではカルシウムの濃度変化が起こり、細胞の代謝変化を導きます。またカルシウムは細胞膜の構造安定化や細胞壁構造の構築にも関係しており、カルシウムが欠乏すると膜構造が崩壊するなどの障害が起こります。

そのような役割を担うカルシウムは、根の機能が低下したり、干ばつに伴って土壌が乾燥したりすると吸収が抑制されます。また、土壌中に窒素やカリウムが過剰に存在、あるいはケイ素が不足している場合や、窒素が過剰に吸収された場合にもカルシウムの吸収が抑制されてしまい、尻腐れ病の発生につながることがあります。

それからカルシウムは葉や果実などに到達した後、移動しにくいという特徴があります。

カルシウムは葉から水の蒸散に伴う水の流れ(蒸散流)によって、土壌から根を通して、地上部のカルシウムが必要とされる部位へ運ばれるとされています。

蒸散流が大きい器官は蒸散が行われる部位である気孔が多い葉です。一方、果実は気孔の少ない部位です。成長中の果実へのカルシウム供給は葉に比べると不足しますが、果実が急速に肥大していく中、肥大に伴い増加する細胞壁の安定化にはカルシウムが欠かせません。よって果実におけるカルシウムの需給量のバランスは崩れやすいのです。

果実でカルシウムが不足していても、他の部位からカルシウムが補われることはありません。そのため生長の盛んな時期や果実肥大期には尻腐れ果が発生しやすくなります。

 

 

尻腐れ病の主な対策

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まず尻腐れ病を生じさせないために、植え付け前にカルシウム分を含む肥料を施したり、追肥として施したりする方法があげられます。尻腐れ病が発生しやすい条件でも述べましたが、単純に土壌中のカルシウムが不足している場合のほか、土壌中の栄養バランスが崩れている場合にも生じやすいので、定直前には土壌診断を行い、肥料成分のバランスに留意することも大切です。

花が生じる前にカルシウム補給剤を葉面散布するのもおすすめです。

またカルシウムの吸収が抑制される条件である土壌の乾燥を防ぐために、わらなどで株元をマルチングしたり、適切な水分管理を行ったりすることも効果的です。

尻腐れ病が発症した場合、その果実が回復することはありませんので、見つけた場合には除去してください。

 

参照サイト

(2024年5月13日閲覧)

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