国内産大豆の現状。大豆の主要輸出入国の変化について

国内産大豆の現状。大豆の主要輸出入国の変化について

近年、国内産の農作物への関心が高まっています。グローバリゼーションの時代に終わりが見え始め、ローカルな価値が見直され始めています。

本記事で着目する大豆において、日本は輸入市場での相対的地位を低下させており、食料安全保障の観点から、新興国に買い負けたり、十分な量を妥当な価格で輸入できなかったりといった懸念が生じています。

 

 

国内産大豆の現状

国内産大豆の現状。大豆の主要輸出入国の変化について|画像1

 

日本の大豆の自給率は、1960年代には28%でしたが、2020年には6%に減少しています。

ただし、大豆の消費量の約70%は精油用で、食品用(豆腐や納豆、味噌・醤油など)に限れば、日本の大豆の自給率は20.6%となります。

大豆の国産割合を食品用大豆の商品別に見ると、豆腐は27%、納豆は21%、味噌・醤油は12%、煮豆・惣菜用は60%です。

日本への輸入の優先度が下がっている!?

日本国内で消費される大豆はかなりの部分を輸入に頼っています。アメリカヤカナダが主要な供給源であり、かつては中国からも多く輸入されていましたが、近年、中国は最大の大豆輸入国となりました。

2000〜2002年平均では、最大の輸入国はEUでシェアは30%を占め、ついで中国が26%、日本、メキシコが9%、8%と続いていました。しかし2017〜2019年平均では、中国が最大の輸入国となり、59%という圧倒的なシェアを占めています。このことにより、世界の需給バランスが崩れ、国際市場の大豆価格は上昇しています。

また中国が最大の輸入国となったことで、航路にも変化が生じています。これまでは北米から直接日本の港に到着していたものが、今はまず中国の港へ行き、そこで別の船に乗り換えて日本へやってくる形がとられています。流通に要する時間が長くなり、流通が不安定になってきています。

大豆需要の変化は追い風になるか、それとも……

日本の伝統的な食品に用いられる国産大豆の自給率の割合は、精油用に比べれば高いものの、日本の代表的な大豆加工食品の需要に翳りが見えつつあります。

近年、納豆を除き、豆腐、味噌、醤油の生産量は減少傾向にあります。

農林水産省『食料需給表』によれば、これら4品目の1990年時点の生産量をそれぞれ100としたときに、2019年時点での数値は豆腐95、納豆139、味噌79、醤油62と、納豆のみ増加している。

引用元:季刊『農業と経済』2022年冬号(88巻1号) p.133〜

一方で、豆乳は同期間において製造量が増加しています。生産量増加の要因には、各メーカーによる「飲みやすい」豆乳の開発や豆乳を食材として使うといった飲料以外の消費場面の増加が挙げられます。

輸入大豆が優先的に利用される背景には

国内産大豆の現状。大豆の主要輸出入国の変化について|画像2

 

最後に、ある結果から見えてきた国内産大豆の利用拡大の障壁について紹介します。小松 雅樹『国内における大豆生産の現状と需給構造に関する研究』(Rikkyo Bulletin of Business No.11、2014年)の第4章、国内における大豆の生産・流通・加工関係者への聞き取り調査には、全国約3,000社の豆腐・油揚げ事業者が加盟する法人化組織・全国豆腐連合会への聞き取り調査において、原材料としての輸入大豆と国産大豆の認識についての調査結果が記されています。

豆腐の原材料である大豆は、アメリカはカナダ産の輸入大豆が主に使われています。加工業者の国産大豆に対する印象の中で、加工業者側にとって重要なのは「大豆の成分」であること、国産と輸入のどちらに原材料としての適性があるかを見ており、国産大豆の評価自体は低くないものの、“「栄養成分情報の提供」「安定的供給の可能性」「低価格」の3つの理由から、現時点では輸入大豆が豆腐原材料として優先的に利用されていることが分かった”と記されています。

国産大豆の利用拡大には、大豆加工食品の生産量の維持・拡大が欠かせません。近年では「大豆ミート」の存在にも期待が高まります。それに加え、最後に紹介した輸入大豆が優先的に利用される3つの理由が国産大豆でも十分当てはまるようになることも重要です。

 

参考文献

  1. 季刊『農業と経済』2022年冬号(88巻1号)(英明企画編集、2022年)
  2. 小松 雅樹『国内における大豆生産の現状と需給構造に関する研究』(Rikkyo Bulletin of Business No.11、2014年)

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