農業に携わる人なら「連作障害」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。そんな連作障害に関する質問が、Yahoo!知恵袋に投稿されており、とても興味深かったのでご紹介します。
「連作障害の疑問ですが、農家の人は同じ野菜を出荷するのに、畑の土を毎回入れ替えるのでしょうか?それとも、毎年違う種類の農産物を出荷するのでしょうか?キャベツ農家が次の年はニラ農家になったりとか?」
本記事では、このYahoo!知恵袋に寄せられた「連作障害」に関する疑問を紐解いていきます。
連作障害とは
まず連作とは「同じ場所で同じ野菜(または同じ科の野菜)を続けてつくること」を指します。連作障害は、連作によって野菜が生育不良になっていくことを指します。連作障害が進むと、品質低下や収量の減少につながってしまいます。
連作障害の原理
本記事では考えられる原因を挙げていきますが、それら単独で連作障害が生じるというわけではありません。紹介するようないくつもの原因が合わさって生じるものと考えられています
栄養の偏り
野菜が成長するには栄養が必要です。
野菜の種類が異なるように、野菜が必要とする栄養分は野菜によってそれぞれ異なります。そんな中、同じ場所で同じ野菜をつくり続けるとどうなるか考えてみましょう。その野菜が必要とする栄養分だけが吸収され、土壌中にはその特定成分だけが不足した状態になります。
またその野菜が必要としない栄養分が土壌中に残ることにもなります。連作によって生じる栄養バランスの崩れが、生育障害を引き起こすものとして考えられています。
病害虫の増加
連作によって生じるのは栄養の偏りだけではありません。土壌中に棲む微生物のバランスも崩してしまいます。特に病害虫の増加は、場合によっては土壌消毒が必要になってしまうため、非常に厄介な存在です。
野菜を狙う病害虫ですが、特定の野菜に特定の病害虫がつくことは多々あります。連作してしまうと、その野菜を中心に発生する病害虫が集まり、繁殖し、密度を増していきます。そうなるとその野菜に発生する病害被害は拡大する一方です。
病害虫も適した環境を選んで生育しますから、毎年異なる野菜を植えれば、病害虫の勢力が拡大するのを抑えることができます。
自家中毒を起こすことも
植物の中には、他の植物の生育を抑制する物質を出すものがあります。微生物にも他の微生物や病原菌を寄せ付けないような抗菌物質を出すものがいますが、それに似た成分を植物も出します。が、その成分濃度が高まると、他の植物に向けて発していた”毒”が自分にも向いてしまい、生育障害を引き起こすことがあります。
連作障害対策
連作障害はさまざまな要因が合わさって生じるものだということがわかりました。次に、連作によって生育不良を起こさせないためにはどうすべきかをご紹介します。結論から言えば、連作しないように農作物を栽培するだけで、上で紹介した
- 栄養の偏り
- 病害虫の増加
- 自家中毒
を回避することはできます。
が、以下で紹介する「輪作年限」や野菜の特徴を知っておけば、より連作障害対策がしやすくなることでしょう。
野菜の輪作年限を知っておこう
連作障害を起こさせないために有効かつシンプルな手段は「連作しないこと」です。
そこで野菜の輪作年限というものを理解しておきましょう。野菜には「同じ野菜を同じ場所でつくるために何年間を開けるべきか」という目安があります。連作を避けて野菜を育てたい場合には、4〜5年の栽培計画を立てましょう。
4〜5年と少々期間が長めの計画にはなりますが、この計画をしっかり立てておくことで、連作障害に悩まされることなく野菜を栽培することができます。
以下、いくつかの野菜の輪作年限です。
- 1〜2年のもの
ウリ科 カボチャ
イネ科 スイートコーン
アオイ科 オクラ
シソ科 シソ
アブラナ科 ダイコン・コマツナ・チンゲンサイ・ミズナ
ユリ科 ネギ・葉ネギ・タマネギ
キク科 シュンギク
アカザ科 ホウレンソウ - 2〜3年のもの
ナス科 ジャガイモ
ウリ科 ニガウリ
マメ科 インゲン・落花生
アブラナ科 カブ・キャベツ・白菜・ブロッコリー・カリフラワー
セリ科 ニンジン - 3〜4年のもの
ナス科 ピーマン・トウガラシ
ウリ科 キュウリ
マメ科 エダマメ
サトイモ科 サトイモ
バラ科 イチゴ - 4〜5年のもの
ナス科 トマト・ナス
ウリ科 スイカ
ショウガ科 ショウガ
マメ科 エンドウ・ソラマメ
連作に強い植物を育てるのも◎
野菜を育てる際、連作障害に強いものを選ぶのもひとつの手です。連作障害に強い植物を接木した苗(接木苗)や連作障害に強い品種を育ててみましょう。
ただし「連作障害に強い」という特徴に甘えて、連作するのはオススメしません。連作に強い植物は、あくまでも起こりうる連作障害に備える程度の心持ちで育てましょう。
基本的には輪作と併用することをオススメします。
重い連作障害が発生してしまったら
土壌消毒や土壌中の病原菌を殺菌し、まっさらな土壌に戻すという方法があります。地温を上げて消毒する太陽熱消毒法などもあります。しかしこれらは重い連作障害が発生してしまった場合の最終手段といえます。
土壌消毒という手段を取らずに済むように、日頃から連作障害対策を心がけておきたいですね。
野菜の特徴を知っておくことも大切
また輪作年限に限らず、生育不良を起こさせないために、野菜の特徴を知っておくことも大切です。
生育よく野菜が育つよう、作付けする場所や栽培時期をうまく組み合わせて野菜を育てましょう。よく日の当たる方角に合わせて、背が高い野菜と背の低い野菜の配置を工夫したり、栄養を奪い合わないように野菜を配置するよう心がけるだけで、生育不良は回避することができますよ。
参考文献