病害虫対策や農作物の生長促進のために、農薬や肥料を使う人は多いと思います。しかし消費者の食への安心・安全志向の高まりから、農薬や肥料の量を控えようと考える人も少なくないのではないでしょうか。
そんな人にオススメしたいのがコンパニオンプランツの存在です。薬剤を使わずとも、害虫被害を防いだり、生長を助けるなどの効果が期待できます。
コンパニオンプランツとは
コンパニオンプランツは、
農学や園芸学において、近傍に栽培することで互いの成長によい影響を与え共栄しあうとされる2種以上の植物の組み合わせ、またはそれらの植物のこと
引用元:コンパニオンプランツ Wikipedia)
を指します。
自然界に育つ植物は、お互いに影響し合って生育しています。人間と同様、相性の良い・悪いが植物にもあります。例えば、日照を好む植物と日陰を好む植物。これらが隣り合って生育している分には、互いの生育が拮抗することはありませんよね。日照を好む植物同士が隣り合ってしまうと競争が起こります。
このようなその植物同士の相性を利用して、害虫対策や生長促進に役立てるのです。
コンパニオンプランツの効果
害虫対策
コンパニオンプランツの効果でもっともわかりやすいのが「害虫対策」です。害虫にも植物に対して好き嫌いがあります。害虫は植物の葉などに卵を産み付けますが、好きな植物に産み付けることがほとんどで、嫌いな植物には近寄ろうともしません。
コンパニオンプランツの代表的な組み合わせとして、ダイコンとニンジンがあります。
まずは天敵についてご紹介しましょう。ダイコンの天敵はモンシロチョウで、ニンジンの天敵はアゲハチョウです。モンシロチョウはダイコンに、アゲハチョウはニンジンに飛んできて産卵します。幼虫は葉を食い尽くしてしまうため、ダイコン農家、ニンジン農家にとって、これらのチョウは害虫でしかありません。
が、モンシロチョウはセリ科の植物、アゲハチョウはアブラナ科の植物でしか産卵しません。また好む植物以外の植物が生えていると、その植物を避けて飛ぶようになります。
この特性を利用して、ダイコンとニンジンを一列交互に播種します。するとモンシロチョウもアゲハチョウも、好む植物の横にそうではない植物が生えていることから、産卵に適した野菜に近寄ることができなくなります。
病気予防
例えば、ネギ科の植物には微生物が共生しています。その微生物が抗生物質を出して、他の病原菌を退けることで、植物の病気予防が期待できます。
またマリーゴールドの根には殺虫成分があります。この殺虫成分には害虫であるセンチュウへの効果が期待できます。センチュウは寄生すると植物の根にこぶを作ったり、根を腐らせたりする厄介な存在です。殺虫成分によりセンチュウを遠ざけることができれば、害虫被害に遭わずに済みますよね。
生長促進
「野菜の根や茎から分泌された物質の中に、他の野菜の生長に役立つ物質がある」と考えられていますが、メカニズムが解明されていないものもあります。しかし植物同士が互いに与える影響が、農作物に良い影響を与えることは多々あります。
例えばトマトとバジル。バジルはトマトと水分を取り合います。バジルの方が吸収力が強く、余分な水分もバジルが成長のために吸収してしまいます。が、トマトは水分吸収を抑制することで甘さが際立ちます。バジルと共に育てることで、甘いトマトが出来上がるのです。
またマリーゴールドやカモミールといった、ハチやアブが集まりやすい植物を植えるのもオススメです。受粉が必要な野菜(トマト、スイカなど)の受粉を助けてくれる効果が期待できます。
農業従事者にこそオススメしたいコンパニオンプランツ
「〇〇×ニラ」or「〇〇×ネギ」
病害虫対策として好ましいコンパニオンプランツがオススメです。
代表的な例として、ニラやネギに他の野菜を合わせる方法が挙げられます。ネギやニラの根や茎に共生する微生物が強い抗菌作用をもっていることが研究によって明らかにされています。抗菌作用のある物質を生成する微生物によって、野菜に害を与える病原菌や害虫を退けることができます。
野菜同士の相性としては、
- 根を深く張るナス科の植物(トマトやナスなど)×ニラ
- 根を浅く張るウリ科の植物(キュウリやスイカなど)×ネギ
が合っています。
アブラナ科×セリ科
先でも紹介しましたが、アブラナ科の植物はモンシロチョウに好まれ、セリ科の植物はアゲハチョウに好まれます。モンシロチョウもアゲハチョウも、好む植物に卵を産み付け、幼虫が葉を食い荒らしてしまいます。しかしそれぞれ、好む植物以外は避けて飛ぶという習性があります。それを利用して、アブラナ科とセリ科の植物を交互に植えましょう。
またニンジン×カブという組み合わせの場合、害虫予防だけでなく生長促進にも役立ちます。カブは生育旺盛になると、水分不足によるストレスで実が割れてしまうことが多々あります。が、ニンジンと交互に植えることでそのストレスが緩和され、割れが少なくなるといいます。害虫予防と割れ対策、その両方ができるので、カブを植える際にはニンジンも一緒に植えてみてください。
アブラナ科とキク科
メカニズムは解明されていませんが、先で紹介したアブラナ科×セリ科のように、アブラナ科×キク科も同様の効果が期待できます。キャベツにつく害虫(モンシロチョウやヨトウガなど)はキク科植物であるレタスを避けます。一方レタスにつく害虫(タバコガなど)はアブラナ科であるキャベツを避けます。こちらも交互に植えることで、両方の害虫被害を予防することができます。
その他オススメの組み合わせ
- バジルとトマト
アブラムシ予防、生育促進作用も - キュウリと落花生
ネコブセンチュウ被害がなくなる - ピーマンとマリーゴールド
マリーゴールドの殺虫成分により、ミナミキイロアザミウマ予防に
参考文献