除草剤とは、その名の通り植物を枯らすために用いられる農薬です。「非選択制除草剤」と呼ばれる除草剤は農作物も同時に枯らしてしまうほど強力なものですが、一般的には「選択制除草剤」と呼ばれる、「雑草」にだけ作用するタイプが使われています。
そんな中、ある除草剤の成分が、農作物の生育障害を及ぼすと話題になりました。
クロピラリドとは
クロピラリドは主に
- アメリカ
- オーストラリア
- カナダ
などで、飼料穀類などの生産に使用されている除草剤の成分です。
除草剤は植物の生長に欠かせない光合成を阻害したり、植物ホルモンを乱すなどして植物の生長を止め、枯れさせます。選択制除草剤の場合には、農作物が分解できて雑草には分解できない成分を使用したり、作物には存在しない阻害作用を及ぼす成分(酵素)などを利用することで、雑草だけを枯れさせることができます。
クロピラリドは植物ホルモン(オーキシン)の作用を撹乱することで、除草効果を示すと考えられています。
クロピラリドによる影響
クロピラリドは家畜や人に対する毒性は低いので、健康被害の心配はありません。しかしクロピラリドによって、その成分の感受性が高い植物に生育阻害が起きることが報告されています。
クロピラリドが農作物に到達されるまでの流れは以下の通りです。
- 成分が含まれた除草剤が散布された牧草等に、クロピラリドが残留
- クロピラリドが残留している牧草を家畜が食べる
- 乳や肉には移行しないが、糞尿として排泄される
- その糞尿が堆肥化されるも難分解性のクロピラリドは分解が進まない
- クロピラリド濃度がほとんど変化しないままの堆肥を使用したことで、生育阻害が発生
クロピラリドの影響を受けるのは全ての野菜ではありません。感受性が異なり、あまり影響しない農作物もあります。しかし、
- トマト
- ナス
- 大豆
- スイートピー
などナス科、マメ科、キク科、セリ科に属する農作物はクロピラリドの影響を受けやすいので注意が必要です。生じる異常としては、葉の異常や果実の変形などが挙げられます。
クロピラリドによる生育阻害を受けないための対策法
家畜由来堆肥の使用について
まずクロピラリドに対する耐性の弱い作物を育てる場合には、
- 家畜由来堆肥の使用を控える
- 家畜由来堆肥を使用する場合も投入量を減らす
- 家畜由来堆肥を施用する際は、土とよく混ぜる
ことを意識しましょう。
家畜由来堆肥の原材料について
少々手間に感じるかもしれませんが、クロピラリド被害に遭わないためにも、家畜由来堆肥を使用する前に、家畜の種類や輸入飼料を与えているかどうかなどの情報を提供元に確認するようにしましょう。
家畜由来堆肥を与える前に、生物検定によって生育障害が出ないか確認することも大切です。詳細は「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」で確認することができます。
耐性のある植物を育てる
生育阻害が起きないようにするため、耐性の強い作物を育てるのも1つの方法です。
- イネ科(麦や牧草、トウモロコシなど)
- アブラナ科(キャベツ、ブロッコリー、ハクサイなど)
- 果樹類
はクロピラリドに対する耐性があります。
ただし、堆肥を与えるときは通常の施用量で与えることを忘れないでください。
堆肥の施用量を遵守する
これはクロピラリド残留が疑われる堆肥に限らず、どの農薬、肥料でも言えることです。各都道府県の施肥基準等に沿った施用量、施用方法で与えるようにしましょう。
除草剤を使わない除草方法はないの?
除草剤の成分クロピラリドについてご紹介してきましたが、最後に「そもそも除草剤を使わない除草方法」についてご紹介していきます。除草は、農作物の生育を妨げる雑草を取り除くことを目的としていますから、
- 雑草を抜く
- 雑草を刈る
- 雑草を生えなくする
などの方法が挙げられます。
雑草を抜くとなるとものすごい労力を必要とします。刈るという方法であれば、鎌や草刈機を使って抜くよりは省力化できますね。とはいえ雑草が生えている面積が広いと労力がかかりますし、機械の刃先で怪我をする危険性や機械の重量による身体的負担などもデメリットとして挙げられます。また雑草の生命力は凄まじいので、2週間ほどでまた刈り取る必要が生じることでしょう。
おすすめなのは、除草剤を使わずに雑草を生えなくする方法です。
- 防草シートを広げる
- 熱湯をかける
といった方法がおすすめです。
雑草を生えにくくする手段として、圃場の周辺にレンガを敷き詰める、コンクリート敷きにするといった方法があります。が、少々コストがかかりますよね。
防草シートであれば、雑草が生えている場所を整地し、シートをかぶせてしまうだけで簡単に対策ができます。雑草の光合成を抑制することができ、雑草がうまく成長できないようにすることができます。
雑草に熱湯をかけるのもおすすめです。雑草にダメージを与えて、生長を抑制することができます。
もちろん、これらの方法も100%防除できるわけではありません。ただ、除草剤を使わずとも除草できる方法を知っておくことで、除草剤による生育阻害の不安があったとしても除草対策を練ることができますよ!
参考文献