本記事では、野菜の特性とそれに見合った養分管理のコツについてご紹介していきます。
軟弱野菜と結球野菜の特性と養分管理についてはこちら。
根菜類
特性
地中にできるものが可食部位となる野菜を指します。サツマイモやダイコン、ニンジンなどは肥大した根、ジャガイモなどは肥大した地下茎が可食部位となります。生育が早いのが特徴で、生育前半(発芽した後の数週間)に窒素を吸収させると収量向上につながります。ただし過剰に与えると茎葉が繁茂し、根の肥大が劣るため、根が肥大してからの窒素は抑える必要があります。
また根菜類の種類によって養分吸収の特徴が異なるので、栽培する際には根菜類全般の特徴をおさえた上で、種類ごとの特徴を捉えることが重要になります。
養分管理のコツ
タンパク質を合成する元となる窒素は、茎葉の伸長を促進するなど、植物の生育に重要な栄養素です。根菜類に施用する際は、量と与える時期に注意しましょう。
ジャガイモの場合、窒素を過剰に与えると単純な収量は増加しますが、イモが大きく育ち過ぎたり変形したりと規格外品が増え、規格内の収量は低下することになります。デンプン価も低下するため、品質に影響が及びます。
与える時期ですが、根が肥大したり着色する時期に必要以上の窒素を施用すると、養分が葉の生長を進行させ、貯蔵養分が不足し、肥大に悪影響を及ぼします。例えばサツマイモとジャガイモは、イモに分化する際に土壌中の窒素が多いと茎葉が過繁茂になり「ツルボケ」が起こります。種類により窒素施用が効果的な時期と抑えるべき時期は異なりますが、適切な施用を心がけましょう。
根菜類の種類により好む肥料養分が異なるので、その野菜が好む養分が不足しないよう注意が必要です。ダイコンはマグネシウムとホウ素、ニンジンはリン酸を要求します。とはいえ、どの養分に関しても言えることですが過剰に与えるのは禁物。カリウムはジャガイモやサツマイモの肥大に重要な成分ですが、過剰に与えるとデンプン含量を低下させるので注意してください。
またニンジンの発芽率を上げる方法に、葉物野菜と混ぜて種を播く方法があります。ニンジンの種は吸水力が弱いため、種を播いた後に土が乾くと発芽が悪くなってしまうのですが、先に発芽した葉物野菜の根が土壌中の水分を保持することで、ニンジンがよく発芽するようになります。
果菜類
特性
トマトやキュウリ、ナスなどが果菜類の代表的野菜として挙げられます。果菜類は栄養生長と生殖成長が同時に進行するのが特徴です。個体を維持するために茎葉を伸長させながら、種族を維持するために果実を肥大させます。そのため連続して収穫するためには、栄養成長と生殖成長のバランスをとりながら養分管理を行うことが重要です。
養分管理のコツ
連続的に収穫するため、追肥に重点が置かれますが、果菜類の種類ごとに好ましい施肥量は異なるので、果菜類全般の特徴を捉えた上で、作物ごとの特徴にそった養分管理が必要です。キュウリやナスは多肥を好みますが、イチゴは少肥を好みます。
トマトやキュウリ、ナスなどの野菜は、栄養成長が過多になると着果しにくくなったり、果形に影響が及びます。
トマトの場合、肥料が十分にあると生育旺盛になりますが、乱形果などが発生しやすくなります。トマトは葉が3枚ごとに花房ができ、下から順番に第1花房、第2花房と呼ばれますが、第3花房が開花するまでは栄養成長を抑え、第3花房着果後から追肥を始めると果実の収量と品質が安定します。なおトマトは土壌中の無機体窒素を10mg/100g前後に維持すると多収になります。
スイカやカボチャなどの野菜は、先述した果菜類に比べると栄養成長と生殖成長の転換がはっきりしています。そのため窒素を施用する適切なタイミングも比較的はかりやすいはずです。スイカは着果期の前に窒素肥料の効果が高いと、茎葉ばかりが生育旺盛になり「ツルボケ」しやすいので注意しましょう。
参考文献
- 黒田麻紀、柏木文吾編『農耕と園芸2017年12月号』(2017年、誠文堂新光社)日本農業検定事務局編『新版 日本の農と食を学ぶ 上級編 ー日本農業検定1級対応ー』(2020年、一般社団法人全国農協観光協会)
- 野菜類の区分はどのようになっているのか教えてください。:農林水産省
- ニンジンの育て方・栽培方法|失敗しない栽培レッスン(野菜の育て方)|サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信
- 4.作物の栄養生理と養分吸収
- トマト|ビギナーズマニュアル|株式会社トーホク
- スイカの育て方・栽培方法|失敗しない栽培レッスン(野菜の育て方)|サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信
- 土づくりと施肥管理 – 日本土壌協会