野菜によって収穫対象となる部位は異なります。ホウレンソウやコマツナなどは葉が可食部位となりますし、ダイコンやサツマイモは根が可食部位となります。収穫する部位が異なれば、求められる収量や品質も異なり、より良い収量、品質にするためには養分管理の方法も変わってきます。
そこで本記事では、野菜の特性とそれに見合った養分管理のコツについてご紹介していきます。前編では軟弱野菜と結球野菜について、後編では根菜類と果菜類についてご紹介していきます。
軟弱野菜
特性
植物分類上、アブラナ科、ユリ科、セリ科などの野菜が軟弱野菜に含まれます。主な品目としてはホウレンソウやコマツナ、シュンギクなどが挙げられます。「軟弱」の名の通り、植物体は痛みやすく、常温で保存すると品質が低下しやすい特徴があります。
デリケートな野菜ではありますが、簡易的な栽培施設や装備等で数多く作付することができ、栽培労力も比較的少なく済むというメリットがあります。
養分管理のコツ
これらの野菜は栄養成長段階で収穫される野菜です。
栄養成長期は個体維持を目的とするため、茎葉を伸ばすために窒素を必要とします。そのため、肥料の与え方が収量や品質に大きく関わってきます。
葉を食用とする野菜は特に窒素を必要としますが、窒素過剰も窒素不足も生育には好ましくありません。
生育期間が短く、年間で数回栽培されるこれらの野菜は肥料成分が土壌中に蓄積しやすく、特に連作している圃場では土壌中の無機体窒素が蓄積しやすいため、土壌分析結果を考慮し、その結果によっては減肥を行う必要もあります。一方で、窒素が不足すると葉の退色や黄化が生じ、生育も滞ります。土壌分析結果や植物体の変化をよく観察しながら、適切に施肥を行いましょう。
軟弱野菜の中でも、ホウレンソウは特に多肥を好みます。葉色を維持するためには肥料切れが起きないようにする必要があり、収穫時にも5mg/100g以上の残存窒素を必要とします。多量の雨が降ると養分が要脱しやすい土壌では、有機質肥料などを活用し、土壌中の窒素を維持する工夫が必要です。
栽培労力が比較的少なく済む軟弱野菜ですが、労働時間の大半を占める収穫、調整作業を省力化するためには、発芽障害や生育むらが起きないよう、土壌のEC(電気伝導度)管理を行います。
ECは土壌中の塩類濃度、窒素肥料の残存量を知るための指標です。
塩類が多く残っている土壌溶液は電気を通しやすくなるため、ECの値は高くなります。ECの値が高い、すなわち土壌中の塩類濃度が高い状態だと、浸透圧※により根の中の水分が土壌中に出て行ってしまい、根から養水分を吸収しにくくなるなどの障害が起きてしまいます。
引用元:今さら聞けない土壌診断の用語。化学性診断の指標について解説。
ECが高くなると発芽障害や生育むらが起こりやすくなるため、播種前にECが0.5〜1.0mS/cm程度になるよう管理しましょう。
結球野菜
特性
葉が巻きながら重なり、球状になる野菜を指します。ハクサイやキャベツ、レタスなどが挙げられます。リーフレタスのように完全に球状にならないものもあります(半結球)。
結球野菜もまた、栄養成長期に収穫する野菜です。養分吸収量のピークは野菜の種類によって異なりますが、窒素を施用するタイミングを逃すと、その後に施用しても効かせることができません。例えばハクサイは外葉が形成される後期から結球初期にかけて養分吸収がピークに達します。このタイミングで窒素が欠乏すると、その後の肥大期に与えたとしても収量向上にはつながりません。
養分管理のコツ
結球野菜ごとの窒素吸収量のピークに合わせて窒素施肥を行うことがポイントです。
また“養分吸収量のピークは野菜の種類によって異な”ると書きましたが、種類によって好ましい肥料養分の種類も異なります。たとえばハクサイはホウ素、キャベツはホウ素とカルシウム、レタスはカルシウムの要求量が多いので、それぞれが好む肥料養分が欠乏しないよう心がけましょう。
それから、これらの野菜は酸性土壌に弱いため、土壌pHが酸性に傾いている場合には石灰質肥料をまいて土を中和しておきましょう。
参考文献
- 軟弱野菜-ルーラル電子図書館ー農業技術辞典NAROPEDIA
- 結球野菜|園芸用語集|サカタのタネ 家庭菜園・園芸情報サイト 園芸通信
- 黒田麻紀、柏木文吾編『農耕と園芸2017年12月号』(2017年、誠文堂新光社)日本農業検定事務局編『新版 日本の農と食を学ぶ 上級編 ー日本農業検定1級対応ー』(2020年、一般社団法人全国農協観光協会)
- 結球野菜を上手に育てるコツ|種・苗・球根・ガーデニング用品・農業資材の通販サイト【タキイネット通販】
- 土づくりと施肥管理 – 日本土壌協会