マルシェや通販などで見かけることが増えた「ビーツ」という野菜をご存知ですか?真っ赤な色が特徴的な「ビーツ」。消費者の健康志向が高まる中、その豊富な栄養素から「食べる輸血」とも呼ばれています。
ビーツとは
真っ赤なスープが印象的なロシア料理のボルシチ。このスープにはビーツが入っています。
ビーツは地中海沿岸が原産の野菜です。カブに形がよく似ていることから「赤カブ」と呼ばれることもありましたが、実際にはホウレンソウと同じアカザ科の植物です。
日本で売られているビーツの多くは、オランダやオーストラリア、ニュージーランドなどから輸入されたものです。海外産であればほぼ通年手に入れることができます。日本では北海道や長野県などで生産されています。
ビーツには
- カリウム
- マグネシウム
- 鉄
- 亜鉛
- 銅
- 葉酸
- ビタミンC
- 食物繊維
など、豊富な栄養素が含まれています。
注目されている“赤い色素”
なお、ビーツの特徴的な赤色は、ポリフェノールの一種で赤紫色の「ベタシアニン」と黄色の「ベタキサンチン」によるもの。合わせて「ベタライン色素」と呼ばれるこの色素には高い抗酸化作用※があります。
※活性酸素から体を守ること。人は酸素を利用してエネルギーをつくりだすが、同時に生じるのが活性酸素。活性酸素は細胞を傷つけ、老化や生活習慣病の原因となる。通常、活性酸素は体内の酵素で分解されるが、体内に活性酸素が増えると分解が間に合わなくなり、体内に蓄積されてしまう。抗酸化作用のある物質は、そんな活性酸素の働きを抑えてくれる。
ビーツがもたらす健康効果
ビーツの健康効果には、
- むくみ解消
- 高血圧予防
- 腸内環境を整える
などが挙げられます。
ビーツにはレタスやトマトの2倍以上ものカリウムが含まれています。カリウムには、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。むくみを解消するだけでなく、塩分の排出により血圧上昇を防ぐことができるため「高血圧予防」にも効果があります。
ビーツに含まれる難消化性オリゴ糖「ラフィノース」も注目されています。ラフィノースには、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌が増殖するのを抑え、腸内環境を整えます。
持久力アップや疲労回復にも効果あり
ビーツがもつ生理作用にも注目が集まっています。ビーツには、体内の一酸化窒素(以下NO)の産生に役立つ生理作用があると言われています。NOは、食事や運動によって体内に一定量産生されている物質です。慢性的な過剰産生が起こると生活習慣病の悪化につながりますが、NOには
- 血行改善
- 血栓の発生を防ぐ
- 血管を柔らかくする
などの働きがあり、「動脈硬化予防」につながります。
ビーツを摂取することでNOの産生を促進することができ、また血行改善により持久力や疲労回復にも効果が発揮されますから、健康意識が高い人にはもってこいの野菜なのです。
ビーツの栽培方法
ビーツの特徴は「寒さに強く、暑さに弱い」です。寒い地域での栽培が最適で、種まきは春(3月下旬から5月)か秋(8月下旬から10月上旬ごろ)に行いましょう。
ビーツの丸々としたをつくるポイントは、
- よく土を耕すこと
- 間引きをすること
- 根が太るスペースを用意すること
です。
また乾燥にも弱いため、夏の終わりに植える場合には気温上昇に十分注意してください。
土づくり
土づくりは種をまく1〜2週間前に行いましょう。ビートは酸性土壌に弱いため、石灰を多めに施し、土の酸度がpH6.5〜pH7.0になるよう調整します。「すじまき」で植えるため、土をよく耕したら畝をつくり、表面を平らになるようならした後、深さ1cmのまき溝をつくっておきましょう。まき溝とまき溝の間は30cmほどあけておきます。
栽培の流れ
種をまいてから60〜80日ほどで収穫できます。ビーツは2〜3粒の種がかたい殻に包まれています。ビーツの種は発芽しにくいため、前日から水につけておきましょう。発芽を揃えたい場合には、水につけておいた種を濡らしたキッチンペーパーに並べ、2つ折にし、芽を出させてから植えることをおすすめします。
乾燥に弱いため、直接植える場合には気温が高い時期は避け、乾燥しないように水やりを徹底してください。
- まき溝に2cm間隔で種をまく
- 土をかぶせ、軽く手で押さえる
- たっぷりと水やりをする
- 本葉が出たら、しっかりとした太い芽を残し、間引く
本葉が1〜2枚のとき、株間が3〜4cm間隔になるように
本葉が3〜4枚のとき、株間が5〜6cm間隔になるように
本葉が6〜7枚のとき、株間が10〜12cm間隔になるように - 根をしっかり太らせるため、2週間に1回肥料を与える
- 土から出ている部分が5〜6cmほどになったら収穫する
育てる際の注意点
種に水をやる際、むらがあると発芽がそろわず、生育が不ぞろいになるため注意しましょう。また多肥を好む野菜のため、肥料分を切らさないよう注意しましょう。収穫のタイミングを誤ると、実が割れてしまったり、根が固くなり食感が悪くなってしまうため、収穫適期がきたら、生育が早いものから順に収穫しましょう。
参考文献