スーパーマーケットなどで普通に見かけるようになったアボカド。おいしく健康にもいいと注目され、国内のアボカド需要は右肩上がりだと言われています。メキシコなどから輸入が供給の大半を占めていましたが、近年では「国産アボカド」も増えつつあります。
亜熱帯果樹でありながら比較的耐寒性もあるアボカドの、基本的な生態や栽培ポイントについてご紹介していきます。
アボカド栽培のポイント
アボカドの生態
中米が原産地とされるアボカドは、大きく3つの系統に分けられます。それぞれの特徴は以下の通り。
耐寒温度 | 収穫時期 | 特徴 | |
メキシコ系 | マイナス6℃前後 | 10〜11月頃 | ・果皮が滑らか ・果皮に光沢がある ・成熟すると紫黒色に着色 ・アニスの香り |
グアテマラ系 | マイナス2℃前後 | 1〜5月頃 | ・皮が分厚く、ゴツゴツしている ・可食部が多い(タネの割合が小さい) ・濃厚な食味 |
西インド諸島系 | 0℃前後 | 9〜12月頃 | ・皮は薄い ・淡白であっさりとした食味 ・土壌中の塩類集積に最も強い |
比較的耐寒性が強いのがメキシコ系とグアテマラ系の2種です。
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品種を選ぶ場合には、栽培する場所の気象条件や栽培方法(露地栽培にするかハウス栽培にするか)などを考慮して決めましょう。アボカドは湿度の高い土壌を苦手とするため、水はけのよい場所という条件は必須。なおハウス栽培なら暖房を利用できるので、栽培地域を選ばず、耐寒性の弱い品種も栽培できます。
混植するか、人工授粉を行う
アボカドは「雌雄異熟型」。一つの花に雄しべと雌しべがありますが、それぞれの活動時間帯が
- 1日目の午前に雌しべ、次の日の午後に雄しべ
- 1日目の午前に雄しべ、次の日の午後に雌しべ
とずれているため、着果率を高めるために開花タイプの異なる授粉樹を混植するか人工授粉を行いましょう。着果を安定させるために、混植した上で人工授粉を行うのも効果的です。
<1品種で人工授粉する場合>
- 雄花(または雌花)が開花したら花粉が入っている葯(やく)を摘み取る
- 摘み取った葯(やく)を冷蔵庫で保存する
- 雌花(または雄花)が開花したら、保存していた花粉をつける
<混植した上で人工授粉する場合>
- 午前中に雄花(または雌花)が開花する品種から、筆などで花粉を採る
- 1を午前中に雌花(または雄花)が開花する品種につける
- 午後はその逆を行う
必ず冬越し対策をする
比較的耐寒性のある植物ではありますが、元々は亜熱帯果樹です。木が若いうちは寒冷紗などの被覆資材で樹を覆い、気温の低下を防ぐなど、果樹に対する基本的な冬越し対策を必ず行いましょう。4〜6年生になると耐寒性がついてきます。
夏は若い木にも成木にもかん水を
アボカドは生育期に水切れを起こしやすい植物です。生長が旺盛な夏場には水を与えましょう。しっかり根づけば頻繁に水やりをする必要はなくなりますが、成木であっても夏場に水が不足すると衰弱してしまいます。
袋がけのススメ
袋がけは手間がかかりますが、無農薬で栽培したい場合などに、害虫から果実を守るのに役立ちます。また雨よけや日焼け防止にも役立ちます。
参考文献
- 『農業ビジネス ベジ 2019 vol.25 春号』,2019年5月30日,イカロス出版
- 「アボカド」の記事一覧|糸満フルーツ園 けんちゃん
- アボカドの育て方 トロピカルフルーツネット
- 果樹研究所:果樹の災害対策集:04:4,被害樹の防寒方法はどうすればよいか|農研機構