2023年5月6日、日本経済新聞で『山形産アーモンドに熱視線 手軽さ魅力、冬場の収入源に』という記事が掲載されました。
サクランボやモモなど果物の生産が盛んな山形県天童市でアーモンドの栽培が行われています。アーモンドはサクラやモモの近縁種です。サクランボやモモの場合、可食部位である果実を大きくするために摘果を行うなど品質管理に手間がかかります。一方アーモンドの場合、タネの中に入った「仁」が可食部位であるため、摘果等の作業を必要とせず、また果肉が鳥の食害に遭っても品質に影響しない、果肉を取り除いて乾燥させれば日持ちするため一年中販売が可能になるなど、さまざまなメリットがあげられます。
アーモンド栽培に力を入れているのは山形県天童市に限らず、鹿児島県湧水町や埼玉県秩父市でもアーモンド栽培が行われています。
国内で消費されるアーモンドは輸入品がほとんどで、国産アーモンドの知名度はまだまだ低いのが現状ですが、手入れがしやすく、冬場の収入源になると注目を集めています。
アーモンドはどんな作物?
アーモンドはバラ科サクラ属に分類される植物です。冒頭でも紹介した通り、サクランボやモモ、アンズ、梅などに近い植物で、高さ5〜6mぐらいに成長する落葉高木です。
温暖で乾燥した地域が主な産地で、海外ではアメリカ・カリフォルニアやイタリア、スペインなどがあげられます。2018年に国内へ輸入されたナッツ類の半数にあたる3万5982トンがアーモンドで、その約97%がアメリカから輸入されています。
アーモンドの種類
まずアーモンドは大きく分けると「スイートアーモンド」と「ビターアーモンド」に分けられます。食用として栽培されているもののほとんどはスイートアーモンドです。スペインなどヨーロッパの産地ではビターアーモンドが栽培されていますが、食用として輸入が認められているのはスイートアーモンドです。
食用されるスイートアーモンドの主な品種には以下のものがあげられます。
品種 | 特徴 |
ノンパレル(Nonpareil) | 扁平で粒がそろっている
傷や割れが少ない |
ミッション(Mission) | 主にヨーロッパで生産されている 丸みを帯びている 味はやや苦い |
カーメル(Carmel) | ノンパレルに近い品種で、ノンパレルの代用品として使われることが多い ノンパレルよりはっきりした風味がある |
ビュート(Bute) | 小型で粒形が丸い 小型チョコに使用されることが多い |
モントレー(Monterey) | 殻が硬く、細長く大粒 風味が強い 粒が不揃いなことが多いため、加工用(刻みやペーストなど)に用いられる |
ピアレス(Peerless) | 殻が硬く、中型 |
ソノラ(Sonora) | 殻が薄く、細長く大粒 |
アーモンド栽培に適した条件とは
定植して実が収穫できるようになるまで5年程度かかるアーモンドですが、栽培に適した条件さえ整えば、冒頭で紹介したようなメリットを得られる作物といえます。
アーモンド栽培に適した気候条件
アーモンドは乾燥する温暖な地中海性気候の地域でよく育ちます。海外では地中海沿岸やアメリカ・カリフォルニア州が主な産地で、オリーブやレモンなどの果樹類が好む気候と同じ条件を好みます。国内で露地栽培を行うのであれば、瀬戸内海沿岸地域が適した地域といえます。生育に最適な温度は15〜32℃です。
アーモンドは耐乾性がありますが、耐寒性は低く、冷害や霜害に非常に弱いため、霜害の多い地域は栽培に適していません。早春の低温による被害を避けるためには防寒対策が必要です。
アーモンド栽培に適した土壌条件
あらゆる種類の土壌で育ちますが、水はけのよい場所を好みます。
湛水状態の土壌は避けた方がベターです。過湿によって病害虫が発生する恐れがあるため、風通しの良い場所に植栽するよう心がけ、梅雨時期には病害虫対策を心がけましょう。梅雨明け後、土壌が干ばつ傾向にある場合には渋みが発生するのを抑えるために、定期的に水やりを行います。
高品質なアーモンドを生産するのに適した土壌pHは7.0〜8.5とされています。
参考文献