農産物トレンドを知る、振り返る【前編】2024年ヒット野菜を振り返る

農産物トレンドを知る、振り返る【前編】2024年ヒット野菜を振り返る

2024年初頭に発表された農産物のトレンド調査で、売れ筋野菜としてサツマイモが1位にランクインしました。焼き芋の需要が加速する中、特に「べにはるか」や「シルクスイート」といったねっとり系で甘い焼き芋の品種が人気を集めていました。また、ほくほく系の品種「栗かぐや」の支持も一定数あり、品種ごとの特色が消費者に選ばれる要因となっていました。

2025年初頭にも農産物のトレンド調査が発表されています。そこで【前編】と題した本記事では、まず2024年のヒット野菜を振り返ります。

 

 

2024年初頭にヒットが予想された野菜

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前述した通り、1位はサツマイモです。次に注目を集めていたのはトマトで、ミニトマトが2位にランクインしました。簡便さや日持ちの良さが重視され、量り売りやヘタなしのニーズが高まったり、猛暑の影響に対応するため、硬くて日持ちが良い品種への期待が高まるなど、トマト市場の変化が反映される結果となりました。9位には中玉トマトもランクインしました。

そのほか、3位のタマネギや4位のブロッコリーは栄養価や汎用性が評価されています。タマネギは生食向けの、ブロッコリーは冷凍向けの需要の高まりが見られました。また、5位に位置するアスパラガスは、輸入品の価格上昇に対して国産品への期待が寄せられました。

もやしは消費者の節約志向を反映して10位にランクイン。コストパフォーマンスの良さが消費者に支持されています。

なお、果物では愛媛県のかんきつ「紅まどんな」が1位に輝きました。この品種は歳暮ギフト需要に応える高級贈答品として確立しています。そのほか国内外で高い評価を受けるリンゴの「ぐんま名月・名月」、イチゴの栃木県独自品種「とちあいか」、糖度が高く皮ごと食べられる点で人気を集めた「クイーンルージュ」や、みかん「ゆら早生」、梨「新甘泉」、小玉スイカ「ピノ・ガール」がランクインしています。

 

 

2024年にヒットした野菜の売れ行きは?(サツマイモ編)

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サツマイモは、日本農業新聞が毎年実施している農畜産物トレンド調査で、2024年には6年連続1位となりました。年々人気が高まっているサツマイモは焼き芋だけでなく、スイーツや干し芋など多様な需要が拡大しています。各地では産地化が進み、消費の定着とブランド化が進んでいます。特に、焼き芋やスイーツの需要の安定が、サツマイモの消費拡大を後押ししています。

各地の産地化について

近年、北海道でのサツマイモ生産が急激に増加しています。温暖化の影響を受けてさつまいもの栽培が拡大しています。札幌市内のスーパーでは「紅あずま」や「シルクスイート」など、本州産のサツマイモに加え、北海道産のサツマイモも並ぶようになり、地元産の人気が高まっています。北海道産のサツマイモは、品質の良さと安定した供給が消費者から支持を受けていることもあり、今後もさらに需要が増えると予測されています。

また茨城県では、主食用米の需要減少を背景に、サツマイモ栽培への転換が進んでいます。茨城県産のサツマイモは、青果用、加工用ともに取扱数量や価格が上昇しています。茨城県農業改良協会のウェブサイトで紹介されている優良事例(有限会社シャリー)では、水田を利用してサツマイモ栽培を行い、収穫したものを自社で干し芋に加工し販売しています。このような取り組みは地域経済にも貢献しており、今後もサツマイモ栽培の拡大が期待されます。

需要の多様化と販売戦略について

サツマイモの需要は多岐に渡り、販売戦略の重要性が増しています。コンビニやスーパーでは、小ぶりで細長い形のサツマイモが好まれ、焼き芋として販売されています。一方で、干し芋やスイーツ用には、太くてしっかりとした品質のサツマイモが求められるため、販路に合わせた生産調整が必要です。産地側では、消費のニーズに対応するため、商品ラインナップの多様化やブランド化を進め、持続可能な生産体制を確立することが求められています。

高い人気を誇るサツマイモの多彩な利用方法と販路開拓が、今後もサツマイモ市場の成長を支えることとなりそうです。

 

 

2024年にヒットした野菜の売れ行きは?(トマト編)

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2024年はトマトジュースの売れ行きが好調でした。その背景には、価格高騰を背景にした生鮮野菜の代替品としての役割があげられます。

2024年の野菜市場ではトマトの価格が高騰しました。生鮮野菜の価格が高騰する中、トマトジュースは安定した価格を維持。そのため、消費者が手軽に摂取できるトマトジュースを選ぶ傾向が強まったとされています。

そのほか、健康志向の高まりや若年層を中心とした消費の拡大もトマトジュースの売れ行きに関与しています。日本の大手メーカー「カゴメ」によると、2024年上半期に「カゴメ トマトジュース」の出荷量が大幅に増加。その背景には、40〜60代の健康に気遣う消費者にトマトジュースが支持されたこと、サウナ愛好家の間で、「ポッカサッポロ」が販売する「キレートレモン」とトマトジュースを混ぜた「キレトマ」が人気を集め、SNSを通じて若年層に広がったことがあげられます。

しかしそんなトマトジュースも、原材料の調達環境が厳しい状態にあります。国産トマトの生産は年々減少しており、一方で輸入品の価格は急激に上昇しています。2023年にはトマトピューレやペーストの輸入価格が前年比58%増となりました。加えて、2024年は夏の猛暑の影響で生産量が減少。高温による着果不良が原因で、熊本県をはじめとするトマト産地では出荷量が減少し、価格が記録的な高値をつける結果となっています。

このように、2024年のトマト市場は、価格高騰や生産環境の厳しさが影響しつつも、トマトジュースをはじめとする加工品の需要が伸びていることが特徴です。手軽に野菜を摂取できる方法としてトマトジュースを選ぶという傾向は今後も続くのではないでしょうか。

 

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