気温が著しく低い冬場は、農作物を育てるのに適した季節とは言えません。
とはいえ農業従事者にとって冬の寒い間に農業が出来ないとなると、「長い冬の間、収入がなくなってしまうのでは?」と不安に思う方も少なくないでしょう。
しかし現代社会において、冬の農業収入を維持する方法はたくさん生み出されています。
冬期間の現状
今回ご紹介する農業収入を維持する方法もメインは“ハウス”を利用した農法ですが、まずは農作業以外で冬場の収入を得る方法についてご紹介します。
長い冬の期間、どうしても農作物の収穫が叶わない場合には「工場アルバイト」「狩猟」などの方法を利用して収入を得る人も少なくありません。例えば厳しい冬が待ち構えている北海道の農業従事者の中には、北海道で生産されているテンサイ(砂糖だいこん)の加工場で働く人もいます。
テンサイやカニの加工場は冬場に人手が必要になるため、農作業を行うことのできない農家の中には、この期間だけ工場アルバイトをする人もいると聞きました。また狩猟は、有害鳥獣の駆除という目的のもと稼ぐことができます。駆除する動物の種類によって異なる報酬を受け取れるため、冬の間はハンターをしている人も少なくない様子。
また農家の中には、農作業ができない期間だからこそ、しっかり体を休める「冬休み」派もいると聞きます!夏場、最も収穫量が多い忙しい時期に1年分の収入が得られる人なのであれば、いっそのこと休むというこの選択肢もいいかもしれませんね。
冬のハウス栽培のメリット
しかし今回紹介したい冬の農業収入を維持する方法は、冬でも農作物を育てて収入を得るという方法です。
ハウス栽培であれば、季節問わず栽培を行うことができます。収穫時期を自分たちでコントロールすることができるのです。なんといっても外で農作物を育てる際に受ける影響、雨、気温、病害虫といった、生育の良し悪しに影響する要因を避けることができるのですから。
例えば水の管理。屋内で育てるため、当たり前ですが雨が降ることはありません。ただ天気に左右されることがないため、水の量によって大きさや糖度調整が可能な農作物にとっては、人為的に水の量を調整することができるという嬉しい利点があります。
加えて、近年のハウス栽培はIT技術を駆使したものがたくさん目に入ります。
IT技術を駆使した管理機能を活用すれば、より冬場の栽培を簡単に行うことができます。例えばハウス栽培の“温度調整”機能はメリットでもデメリットでもありました。寒い外気を遮断する場合には、外が0℃の場合でもハウス内を4℃ほどに保つことができるため、冬場の農作物栽培にも役立ちます。
ただ日中気温が上昇すると、ハウス内部の温度が極端に上がってしまいます。外気が10℃なのにハウス内部は35℃なんてことも珍しくありません。このデメリットを解消するために、今までは外気と内部の気温調整のため、ハウスを開閉し調整する必要がありました。しかし現代のIT技術を駆使すれば、温度や湿度など農作物の生育に紐づく環境を自動でコントロールすることができるのです。その上IT技術を駆使した“スマート農業”の中には、水や肥料を与える機能がついているものもあるので、農作業の負担が軽減します。
また農業“収入”という点で、冬場の収穫は強みになります。
なぜなら冬場は競争率が低いからです。冬場は野菜が育ちにくいため、高値で取引されるのです。もちろんスマート農業が浸透し始めている今、冬場に野菜を育てる人は今後増えていくのかもしれませんが、それでもまだまだ旬の季節ではない時期に採れる野菜は高値で取引されています。消費者の購買意欲を着く、冬の野菜栽培。挑戦してみてはいかがでしょうか。
冬のハウス栽培のデメリット
ただし、もちろんメリットばかりではなりません。
例えば冬、農作物にとって最適な環境をつくることはできるかもしれませんが、ハウスそのものが“被害”を受けては栽培を続けることができません。既存のハウスは積雪に弱いのです。また強風にも弱い点が挙げられます。外気の環境を整えることはできますが、ハウスそのものが外の天候に影響を受けてしまっては、育つものも育ちません。ハウスの管理にも注力する必要がある、それがデメリットです。
金銭面的にも管理が必要です。
冬の間だけでなく1年中ハウスのビニールを張りっぱなしにしていては、当たり前ですが劣化します。そのためこまめに点検を行い、必要であれば張り替えが必要になります。ビニールハウスの外観のみならず、IT技術も活用するのであればそれなりの出費は必要になります。初期投資だと腹をくくりましょう!
とはいえ、初期投資の価値があるのであれば挑戦しても良いのではないか?と私は考えています。というのも、私は “耕作放棄地にソーラーパネル付きのビニールハウスを建てて農業をしている”農地を見学したことがあります。その農地は5年以内に初期投資分以上の収入を得ていました。
今まで活用されていなかった農地で、安定した収穫が得られるようになったことが要因です。ハウス栽培にかかる費用を初期投資と見るか否かは、取り組む人の考えに託しますが、冬の農業収入を得るアイディアの一つとして、頭の片隅に置いておくのもありなのではないでしょうか。
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