新型コロナウイルスの感染拡大により、農業を含むさまざまな生業が打撃を受けています。そのため国や地方自治体が助成金などの支援策を打ち出しています。
本記事で注目するのは「雇用調整助成金」です。
これは企業が従業員に払った休業手当の一部を国が助成するというもの。詳細や助成対象者については後述しますが、農業経営者ならチェックしておきたい助成金です。
雇用調整助成金について
雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。
引用元:雇用調整助成金|厚生労働省
景気の変動や産業構造の変化などの影響により、事業活動が縮小してしまった事業主を支援する制度です。新型コロナウイルスにより影響を受ける事業主の支援のために、雇用調整助成金に特例措置が実施されることになりました。
本記事で取り上げるのは、その特例措置の内容です。
(通常時の雇用調整助成金について知っておいて損はないので、厚生労働省ホームページ「事業主の方のための雇用関係助成金」より「雇用調整助成金」もぜひ読んでみてください)
助成対象者、受給要件について
雇用調整助成金(通常時) | 特例措置の場合 | |
助成対象者 | 経済上の理由で、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主(全業種) |
受給要件 | 生産指標要件あり(下記参照) | 生産指標要件が緩和 |
その他 | 雇用保険被保険者が対象 | 雇用保険被保険者ではない労働者の休業も対象に含まれる |
助成対象者は以下の通りです。
令和2年4月1日~令和2年6月30日まで(緊急対応期間)に新型コロナウイルス感染症の影響により、労働者に対して休業を実施した事業主。
先で紹介した雇用調整助成金の概要にあった“経済上の理由”、これが特例措置の場合には“新型コロナウイルス感染症の影響”となります。
次に受給要件です。
冒頭文等でも触れた通り、この助成金の目的は「雇用の維持」です。事業活動の縮小を余儀なくされた場合でも、休業や教育訓練などの一時的な雇用調整を行うなど、従業員の雇用を維持した場合に助成されるもの、ということはお忘れなく。
特例措置では「生産指標要件」が緩和されました。生産指標要件は「通常時」の受給要件(以下に記載)の2.の部分です。
- 雇用保険の適用事業主である
- 最近3ヶ月の売上高や生産量などが前年同期10%以上減少
- 最近3ヶ月の雇用保険被保険者数および派遣労働者数による雇用量が前年同期に比べて
・中小企業の場合、10%超え、かつ4人以上
・中小企業以外の場合、5%超え、かつ6人以上
増加していないこと - 一時的な雇用調整(休業、教育訓練、出向)が一定基準を満たすこと
- 過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある場合、新たに対象期間を設定する際、直前の対象期間満了の翌日から数えて一年を超えていること
特例措置の場合、生産指標要件が「3ヶ月10%以上低下→1ヶ月5%以上低下」に緩和されます。以下、厚生労働省「雇用調整補助金(新型コロナ特例)」に記載されている「支給対象となる事業主」の要件です。
1.新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
2.最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している(※)
※比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置があります。
3.労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
申請方法
まず、支給までの流れについて記載します。
大まかな流れは、
- 支給申請
- 申請の内容について労働局で審査
- 支給決定(または不支給)
となります。
通常時は原則として、休業等を実施する前に「計画届」を提出する必要があります。そのため
- 労使間協定・休業の計画
- 計画届を提出
- 休業等を実施
- 支給申請
- 申請の内容について労働局で審査
- 支給決定(または不支給)
となります。
ですが、特例措置では「計画届」の事後提出が可能。すでに休業等を実施していても、2020年6月30日までは事後提出が可能です。
次に申請方法です。
計画届の提出、支給申請ともに、
- 事業所の所在地を管轄する都道府県労働局
- ハローワーク
のいずれかで行います。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、できる限り郵送で行いましょう。労働局やハローワークで申請を行いたい場合には、その場所が指示する感染拡大防止対策に努めましょう。
申請方法にオンライン受付も
令和2年5月20日正午からオンラインでの受付が加わります。専用のシステムは厚生労働省のホームページから入ることができます。また今後、必要書類を減らすなど、手続きの簡素化も進むようです。
(従業員が20名以下の会社や個人事業主といった小規模事業者は、支給申請が簡単なものになっています。申請書類の様式をダウンロードするなら厚生労働省の特設ページが便利です)
『雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)』は、通常時と特例措置の違いが表で示されているなど、各内容がわかりやすく記載されているので、相談や申請する前には一度目を通しておくことをおすすめします。
参考文献