2018年、コメの生産量を調整する「減反」という制度が廃止されるのに伴い、“減反補助金”も廃止されることになりました。1970年代から続いてきた政策でしたが、廃止に伴いどのような影響があるのでしょうか。本記事では「減反」と「減反廃止による影響」について紹介していきます。
減反とは何か
「国が、農家の生産するコメの量を決める」という制度です。日本政府がコメの生産上限を示し、生産量を制限します。この際、減反に協力した農家さんに補助金が支給されます。この制度は、1969年に続いたコメの豊作により大量に余ってしまった在庫米を処理するために導入されました。流通を調整することによって、米価を安定させる狙いがあったのです。
しかし、今は現代です。ごはんよりもパンや麺類が多く食べられていたり、海外産の安いコメを輸入するようTPPやFTA交渉によって圧力を受けたりと、コメを取り巻く環境は大きく変わっています。特に海外からの輸入圧力が強まっているのは「減反廃止」の大きな要因と言えるでしょう。
減反廃止までの背景・流れ
国が、減反政策の廃止を打ち出したのは5年前のことです。「減反」という制度は、国がコメの生産量・価格を決め、「農家の自由な発想を縛り付けている」と長年批判されてきた制度でもあります。コメ価格の下がりにくさから、消費者に負担がかかることについての意見も上がっており、政策見直しへと話が進んでいきました。
もちろん、いきなり海外産の安いコメと競争を迫られてしまうと、コメの価格が暴落したり、小規模な農家の経営が圧迫されることが考えられるので、減反補助金を段階的になくすよう努めたり、収入を補う保険制度についても考えられています。
「減反廃止」「減反補助金の廃止」で期待されているのは、海外と競争できる美味しく、安いコメの生産です。補助金が廃止されれば、小規模な農家が農地を貸し出すことが考えられます。大規模な農業経営を行うところに農地が集まれば、効率的にコメが収穫できると考えられています。生産コストを現在の4割下げる目標を掲げており、それでいて品質を維持することができれば、高品質・低価格なコメをもって、海外と競争することができるというわけです。
減反廃止で変わること・減反補助金がなくなることへの不安
国に調整されることなくコメの生産目標を設けることができます。農家さん自身の判断で、コメの増産に踏み切ったり、品種改良に力を入れたりすることができます。
ただし全国の農家さんが一斉に増産すれば、価格の暴落や市場の混乱が起きかねません。そのようなリスクを頭に入れた上で、減反廃止後の生産を計画する必要があります。
また「減反廃止」は、補助金によって安定した収入を得ていた農家さんにとっては不安でしかありません。高齢の農家は「自分たちで販売する能力がない」「収入が下がる」という不安を抱えています。ある農家の場合、今まで30kgあたり375円の補助金が交付されていました。減反廃止となれば、300〜400万円の減収となります。高齢になると、体力などの問題から労力をかけることが難しくなります。制度の変更に柔軟に対応できる体力が残されていない人にとっては、不安を感じる事態であるということも十分理解できます。
減反廃止に伴い、コメ農家はその経営において決断しなければなりません。状況を受け入れ、海外への輸出を考えたコメづくりに取り組むのか、ないしはコメ農家を辞め、その他の農作物を育てることに方向転換を行うか等です。
本記事で着目した「減反廃止」に限らず、今後の日本農業では「自ら販売する力」が必要とされることでしょう。ただ農作物を育て出荷するだけでなく、経営力がある農家が生き残っていく厳しい世界となりそうです。