日本政府は、農業に関連するさまざまな支援事業を展開しています。主な支援事業には以下のものが挙げられます。
- 農業経営、法人化への支援事業
- 農業者年金制度
- 農林水産物の輸出支援事業
- 農地転用促進事業
- 農地改良事業
- 農業労働者等社会保険制度
たとえば法人化への支援事業の場合、法人化に必要な法務手続きや財務・税務のアドバイスなどの支援が行われます。
本記事でご紹介する支援事業は、その中でも機械や施設の導入に関連するものです。
農地利用効率化等支援交付金
経営改善に必要な農業用機械・施設の導入を支援するものです(令和5年1月31日から行われていた事業要望調査はすでに終了しています)。
支援の対象となる事業内容には、「農産物の生産、加工、流通など農業経営の開始または改善に必要な機械等の取得、改良、補強や修繕」「農地等の造成、改良、復旧」などが挙げられます。具体的にはトラクターや田植え機などの取得、ビニールハウスの整備、明きょ・暗きょ排水の整備などの農地改良などが対象です。
支援内容は後述するタイプによって異なりますが、①〜③の計算方法で算定した額のうち、一番低い額が助成金額となります(ただし算定額が上限額を超える場合には、上限額が助成金額となります)。
①=事業費×3/10
②=融資額
③=事業費ー融資額ー地方公共団体等による助成額
上限額は法人・個人問わず 300万円
農地利用効率化等支援交付金には大きく分けて2つのタイプがあります。
融資主体支援タイプは「融資を受けて、経営改善の取組に必要な農業用機械・施設の導入を行おうとする農業経営体に対して、支援を行うもの」です。
もう1つの条件不利地域支援タイプは経営規模が小規模・零細な地域において、農作業の共同化や農地の利用集積の促進等により、生産性の向上や農作業の効率化等を図るために必要となる共同利用機械等の導入を支援するものです(出典元:令和5年度 農地利用効率化等支援交付金)。
融資主体支援タイプにおいて事業実施地区に該当するかどうか、助成対象者に該当するかどうかなどは、農林水産省や地方自治体が公開している資料から確認するか、または市町村の農政担当部局へ問い合わせることをおすすめします。
産地⽣産基盤パワーアップ事業のうち収益性向上対策
産地生産基盤パワーアップ事業は「収益力強化に計画的に取り組む産地に対し、農業者等が行う高性能な機械・施設の導入や栽培体系の転換等に対して総合的に支援」するというものです(出典元:産地生産基盤パワーアップ事業関係情報:農林水産省)。
このうち、地域農業再⽣協議会等が作成する「産地パワーアップ計画(収益性向上タイプ)」に 参加する農業者、農業者団体(農業協同組合、農事組合法⼈、農地所有適格法⼈、その他の農業法⼈、その他農業者が組織する団体)等を対象に、コスト削減に向けた⾼性能な農業機械のリース導⼊・取得や⾬よけハウス等、⾼付加価値化に必要な⽣産資材の導⼊等への支援が行われます。農業機械のリース導入・取得、生産資材の導入ともに補助率は1/2以内です。リースの場合は本体価格の1/2以内となっています。
問い合わせ先には最寄りの地域農業再生協議会や都道府県などがあります。
農業経営基盤強化準備⾦制度
最後に紹介する制度は、対象者の条件や支援内容が最もわかりやすいものといえるかもしれません。
この制度は「計画的に農業経営の基盤強化(農用地、農業用の機械・施設等の取得)を図る取組を税制面で支援する」というものです。
対象者は、青色申告により確定申告を行う認定農業者(個人・農地所有適格法人)または認定新規就農者(個人)で以下のいずれかに該当する農業者です。
農業経営基盤強化促進法に基づき市町村が策定する地域計画において農業を担う者として位置づけられていること
地域計画が策定されていない場合は、従来の人・農地プランにおいて中心経営体として位置づけられていること
この制度は、本来課税対象である農林水産省から受けた交付金を、必要経費として算入できるというものです。先で紹介した対象者の条件や各市町村への事前申請を行う必要はありますが、交付金を「農業経営基盤強化準備金」として積み立てることで、確定申告時に個人事業主は必要経費に、法人は損金として算入することができます。
「農業経営支援策活用カタログ」は必読!
本記事では機械や施設の導入に関連する3つの経営支援策をご紹介しました。農林水産省が公開する「農業経営支援策活用カタログ2023」には、機械や施設の導入以外にも、資金調達や自然災害や収入減少への備えに関する支援策など、さまざまな目的に合わせた支援策が紹介されています。本記事で紹介した内容はこのカタログに掲載されている内容のほんの一部にすぎません。条件に当てはまる支援事業をぜひ確認してみてください。
なお、ウェブサイトにも記載されていますが、このカタログの内容は2023年度予算を中心としたものであり、2023年4月時点での内容です。先でも紹介しましたが、一部事業では募集を終了しているものもあるので、ご注意ください。
参考文献