新型コロナウイルスの感染拡大により、影響を受けた事業者向けの補助金や助成金、融資といった支援制度の話題が目に入るようになった人も少なくないのではないでしょうか。これらの支援制度は新型コロナウイルスの影響を受けた事業者に特化したものですが、他にも農業者が知っておいて損はない支援制度はあります。
そこで本記事では、知っておいて損はない助成金をまとめました。
※「助成金」と「補助金」は、国や地方公共団体等から支出される、原則として返済不要なお金ですが、厳密には
- 助成金 受け取る要件が決まっており、要件さえ満たせばほぼ支給されるもの
- 補助金 予算が決まっており、最大何件と決まりがある
などの違いがあります。ただし一般的には区別なく使われていることが多いため、ここでは「助成金」と統一してご紹介していきます。
※本記事では具体的な対象者や要件等を割愛し、概要のみを記載しています。気になる助成金がある場合には、各項目末尾にある公式ホームページで詳細をご確認ください。
知っておいて損はない助成金まとめ
設備投資するなら
『強い農業・担い手づくり総合支援交付金』は「強い農業づくり交付金」と「経営体育成支援事業」が統合されたもので、そのタイプによって対象者はさまざまですが、主に
- 農業者の組織する団体
- 民間事業者
- 農地中間管理機構を通じて農地を借りた人
などが対象の助成金です。
農業用機械や施設の導入等にかかる費用を補助してくれる制度となっています。
タイプ別の内容を大まかに説明すると、以下の通りです。
- 産地基幹施設等支援タイプ
→産地の収益力強化や合理化をはかるのに必要な施設の整備・再編を助成。 - 先進的農業経営確立支援タイプ
→融資を活用して農業用機械・施設を導入する場合に助成。 - 地域担い手育成支援タイプ
→融資を活用してトラクター等の農業用機械やハウス等の施設を導入する場合に助成
農業経営の効率化を検討している方、最新鋭の技術を取り入れ、高い目標をもって地域や農地の発展を目指している方は目を通しておくことをおすすめします。
雇用に関するものなら
『農の雇用事業』は農業法人等が新規就農者である雇用者等に実施する研修を支援するもの。こちらも3つのタイプに分けられます。内容は全て、農業法人等(農業を経営する個人や法人)が新規就農者に実施することが前提です。
- 雇用就農者育成・独立支援タイプ
内容:生産技術や出荷・販売ノウハウ習得のために実施する研修費用として
金額:年間最大120万円
期間:最長2年間 - 新法人設立支援タイプ
内容:独立または経営継承を伴う農業法人設立に向けて実施する研修費用として
金額:年間最大120万円(1〜2年目)、年間最大60万円(3〜4年目)
期間:最長4年間 - 次世代経営者育成タイプ
内容:次世代経営者として育成するため、先進的な農業法人や異業種法人等へ派遣し、実施する研修費用として
金額:月最大10万円
期間:最長2年間
新規就農するなら
『農業次世代人材投資資金』は新規就農を目指す49歳以下の人に資金を交付するもの。こちらは2つのタイプに分けられます。
- 準備型
内容:必要な技術等を習得するために研修を受ける人に、資金が交付される
金額:150万円(研修期間1年当たり)
期間:交付対象となる研修期間は最長2年間 - 経営開始型
内容:独立・自営就農する認定新規就農者に、資金が交付される
金額:最大150万円(1年当たり)
期間:最長5年間
『農業次世代人材投資資金』は交付要件を満たし、助成金が交付されたとしても、要件内容に見合わないことが生じた場合(例えば適切な研修を行っていない、適切な経営を行っていない等)には、交付停止や返還等の措置がとられます。
農業研修を受けてから就農したい人、また就農後、どうしても収入が不安定になる就農初期などに心強い助成金ですが、交付要件を確認し、しっかりと就農までの計画を立ててから申請するようにしましょう。
荒廃農地を活用するなら
『荒廃農地等利活用促進交付金』は荒廃農地などで農業を再開するために必要な再生作業、土壌改良などを総合的に支援するものです。新規就農者のための優先枠「チャレンジ支援枠」も設けられています。
- 内容:荒廃農地の再生利用及び発生防止活動のため
- 補助率:は1/2相当(再生利用活動では5万円/10a、発生防止活動では2万円/10a等、重機を用いて行う再生作業や施設等の整備では55%等)
- 期間:上限は3年間(チャレンジ支援枠は4年間)
実施要件には“再生された農地において5年間以上耕作されること”とあります。荒廃農地を活用したいと考えている人は、ぜひ確認してみてください。
IT導入に積極的なら
『IT導入補助金』は、ネット通販サイトの開設や、顧客情報や売上管理のために必要なパソコンやタブレットの導入にかかる費用を補助してくれるもの。
- 内容:経理や総務等の業務の効率化をはかるためのITツール導入を支援
- 金額:30万〜450万円
- 補助率:1/2
6次産業化が注目される昨今、農作物を自ら販売することに挑戦している人も少なくありません。ITの導入で、経理や総務等の業務の効率化をはかるのであれば、ぜひチェックしてみてください。
助成金に共通する注意点
冒頭でも述べましたが、本記事では概要のみを記載しています。それぞれ対象者や要件が異なるので、必ず公式ホームページを確認するか、資料を取り寄せ、自分が対象者かどうか確認するようにしてください。
また助成金の中には、『農業次世代人材投資資金』のように、要件を守らなかった場合に交付停止になったり、返還の義務が生じたりする場合があります。そのため助成金の種類によっては、万が一補助金の返還義務が生じた際のことも考えた上で申請する必要があるといえます。
助成金の目的に見合っているかどうか、自分に合った助成金の内容がどれか迷った場合には、「農林水産省の逆引き言典」が便利です。対象者や目的等にチェックを入れて検索すると、その内容に見合った支援制度が出てきます。
本記事で紹介した助成金は、支援制度のごくごく一部に過ぎません。「農林水産省の逆引き言典」等も活用して、使えるものがないか確認してみてください。
参考文献