新型コロナウイルスの感染拡大により、さまざまな事業者向けの補助金や助成金といった支援制度が目に入るようになりました。これらの制度は新型コロナウイルスの影響に特化したものですが、農業者が知っておいて損はない支援制度は他にもあります。
そこで本記事では、知っておいて損はない、農業に関する「融資」についてまとめました。
※融資は「お金を借りること」にあたり、助成金や補助金のように原則として返済不要なお金とは異なります。
※本記事では具体的な対象者や要件等を割愛し、概要のみを記載しています。気になる融資がある場合には、各項目末尾にある公式ホームページで詳細をご確認ください。
知っておいて損はない農業に関する融資まとめ
農業機械や施設等を取り入れるなら
『農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)』は認定農業者※を対象とした融資です。
※農業経営改善計画を作成して市町村長の認定を受けた個人・法人。個人の場合、簿記記帳を行っている、または今後簿記記帳を行うことが条件となる。
資金の使い道として、
- 農地等の取得、改良
- 農業経営用施設・機械などの取得、改良
- 規模拡大や設備投資などに必要な原材料費や人件費
等があげられます。
- 金利:令和元年12月18日現在、借入期間に応じて0.16%~0.20%
- 貸付限度額:個人3億円(特別に承認された場合6億円)/法人10億円(特別に承認された場合20億円)
- 返済期間:25年以内(うち据置期間10年以内)
また『青年等就農資金』は認定新規就農者※を対象とした無利子の融資です。
※新たに農業経営に取り組む「青年等」であり、市町村から青年等就農計画の認定を受けた者を指す。
「青年等」は
- 原則18歳以上45歳未満
- 知識・技能を有する65歳未満
- これらの者が役員の過半数を占める法人
を指す。“新たに農業経営に取り組む「青年等」”は農業経営を開始してから5年以内のものを含む。ただし、認定農業者は含まれない。
資金の使い道には
- 農業経営用施設や機械などの取得、改良
- 農産物の処理加工施設などの取得、改良
- 流通販売施設・観光農業施設などの取得、改良
等があげられます。
- 金利:無利子(借入れの全期間)
- 貸付限度額:3700万円(特別に承認された場合1億円)
- 返済期間:17年以内(うち据置期間5年以内)
経営改善、農業改良などに取り組むなら
JAの農業融資の一つ『農業近代化資金』。
意欲ある農業者等が経営改善を図るのに必要な長期かつ低利の資金
引用元:農業近代化資金:農林水産省
資金にはいくつか種類があり、
- 建構築物等造成資金
→農産物の生産、流通または加工に必要な施設の改良、復旧、取得等に使える資金 - 果樹等植栽育成資金
→果樹その他の永年性植物の植栽、育成に使える資金 - 家畜購入育成資金
→乳牛その他の家畜の購入、育成に使える資金 - 長期運転資金
→農業経営の規模の拡大等に使える資金
などがあげられます。
- 金利:令和元年12月18日現在、0.20%
- 貸付限度額:個人1,800万円、法人・団体2億円
- 返済期間:
認定農業者 原則15年以内(うち据置期間7年以内)
認定農業者以外の農業者 原則15年以内(うち据置期間3年以内)
認定新規就農者が認定青年等就農計画に従って就農する場合 原則17年以内(うち据置期間5年以内)
この資金は都道府県ごとに貸出条件が異なる場合があり、また対象者によっては利用できない条件もあるため、公式ホームページや資料を見て、自身が対象者や要件に見合っているかどうかを確認しましょう。
また、後述する「農林水産省の逆引き言典」を使って、対象者や目的から適切な融資制度を導き出すこともおすすめです。
もしあなたがエコファーマー、農商工等連携促進法、農林漁業バイオ燃料法、六次産業化法等の認定を受けた農業者等であるならば『農業改良資金』もあります。
農業経営における生産・加工・販売の新部門の開始や、品質・収量の向上、コスト・労働力の削減のための新たな取組のために活用できる資金です。
- 金利:無利子(借入れの全期間)
- 貸付限度額:個人 5000万円、法人 1億5000万円
- 返済期間:12年以内(うち据置3年以内)
『農業改良資金』を受けるには、農業改良措置の要件として記されている
- 新しい農業部門の開始(今まで扱ってこなかった作目、品種への進出)
- 新たな加工事業の開始
- 農産物または加工品の新たな生産方式の導入(品質・収量の向上やコスト、労働力の削減を目的としたもの)
- 農産物または加工品の新たな販売方式の導入
のいずれかを満たす必要があります。検討されている方は要件等のご確認を。
自然災害や社会的・経済的な環境変化等で安定した農業経営が困難なら
『農林漁業セーフティネット資金』は
自然災害や社会的・経済的環境変化等により、農業経営の維持安定が困難な農業者が、一時的影響に緊急的に対応するために必要な長期かつ低利な資金。
であり、新型コロナウイルス感染症関係の金融支援策にも記載されています。
認定農業者、認定新規就農者等が、「ご利用いただける要件」のいずれかの状況に置かれている場合に利用することができます。
<ご利用いただける要件>
- 災害
→災害被害を受けた方 - 行政指導
→BSEや鳥インフルエンザ等の発生により家畜の殺処分や、畜産物の移動制限を受けた方等 - 社会的又は経済的環境の変化による経営状況の悪化
<概要>
- 金利:令和元年12月18日現在0.16%
- 貸付限度額:一般 600万円(特別に承認された場合、年間経営費等の6/12以内※)
- 返済期間:10年以内(うち据置3年以内)
※簿記記帳を行っており、特に必要と認められる場合
各融資に共通する注意点
本記事では概要のみを記載しています。対象者や要件等はそれぞれ異なります。必ず公式ホームページを確認する、または資料を取り寄せる、申請様式を作成する前に都道府県や市町村等に相談するようにしてください。
本記事でご紹介した融資制度は、今ある制度のごく一部です。『農業近代化資金』でもご紹介しましたが、「農林水産省の逆引き言典」を使うと、自分の条件や目的に見合った融資制度を導き出すことができます。対象者や目的等にチェックを入れて検索すれば、求めるものに見合った融資制度を知ることができるので、ぜひ一度確認してみてください。
参考文献