6次産業化のヒントに。6次産業のアイデアと成功のポイントについて

6次産業化のヒントに。6次産業のアイデアと成功のポイントについて

昨今農業界では新しい農業の形に注目が集まっています。

IoTやAI技術を活用した「スマート農業」もそのひとつですが、本記事で着目するのは「6次産業」についてです。本記事では6次産業化が推進される中、女性農業者が主婦の視点で開発した野菜加工食品のアイデアをはじめ、6次産業化のメリットや成功のポイントについて紹介していきます。

 

 

野菜加工食品のアイデア

6次産業化のヒントに。6次産業のアイデアと成功のポイントについて|画像1

 

日本農業新聞にて女性向けに売り込んでいる「野菜加工食品」が取り上げられていました。長崎県雲仙市で農産物の生産・加工を行う株式会社マルニが販売しているのは、温野菜を真空パックした「ゆで野菜」です。国産のジャガイモや人参を皮ごと茹でたこの製品は、美味しさはさることながら、働く女性や単身者をターゲットに調理の下準備がいらない野菜として売り出されています。

「キャリアウーマン応援野菜」という通称もつけられ、販路拡大を進める注目の商品です。この商品には農家側にもメリットがあります。露地栽培の野菜を一定価格で買い取る契約を結んでいるため、豊作時の市場価格暴落の影響を受けずに済むのです。

 

野菜加工食品のニーズ

株式会社マルニが売り出す「ゆで野菜」を含め、近年カット野菜などの野菜加工食品の市場、業界は成長し続けています。

その背景には共働き世帯の増加や料理の時短調理化、健康志向や農作物の安定した価格などがあると言われています。

手軽に食べられる野菜としてカット野菜の認知が広まりつつある現状からも分かる通り、野菜加工食品は幅広い用途で活用することができます。
先で紹介した事例のような市販用のもののみならず、野菜加工食品の用途として定番とも言える業務用、給食・介護食用などの用途も挙げられます。またカット野菜は取り扱う側にも利点があります。特にわかりやすいのが外食業界です。すでにカットされている野菜を使うことでゴミが出ず、歩留まりもよく、また原料価格が市場の状況に影響を受けにくいなどのメリットがあります。

 

 

6次産業化のメリット

6次産業化のヒントに。6次産業のアイデアと成功のポイントについて|画像2

 

まず6次産業という用語について説明させてください。6次産業は、生産を主とする農業(1次産業)を、加工(2次産業)、サービスや流通(3次産業)まで一体化させ、農業の可能性を広げる目的で進められている新しい産業です。”6次”は生産~流通までを一体化させるという意味合い(1次×2次×3次)からきています。

この取り組みが推進される背景には、

  • 農業従事者の所得が伸び悩んでいること
  • 農業生産シェアが食品産業全体で見たときに弱いこと

などが挙げられます。農林水産省東海農政局 小平 均氏が執筆した「6次産業化について」によると、「20年間で農業生産額は7割、農業所得は半分に」「1次産業は、食料関連産業の1割強の生産額に」と記されています。

 

メリット

生産~流通までを一体化させる6次産業のメリットを以下に記します。

  • 農業従事者の所得向上につながる
  • 所得向上により農業経営が安定する
  • 農閑期に仕事ができる
  • 生産~加工、加工~流通の間にかかっていたコストを削減できる
  • 農業生産だけでは得られなかった新しいネットワークに期待できる等

 

デメリット

生産~流通までを一体化させる6次産業のデメリットを以下に記します。

  • 新規事業を行うための時間が必要になる場合がある
  • 新規事業を行うための労力が必要になる場合がある
  • 衛生面でトラブルが発生した際、リスクが大きい
  • 在庫リスクが大きい等

 

6次産業化成功のポイント

6次産業化のヒントに。6次産業のアイデアと成功のポイントについて|画像3

 

最後に、6次産業化を成功させるポイントをご紹介していきます。

 

農産物を加工する際のポイント

まず商品開発をする際はマーケットを明確に把握しましょう。農産物を加工するだけなら比較的簡単にできると思いますが、重要なのはその加工食品が「売れる」ことなのではないでしょうか。6次産業を進める動機は人それぞれ違いますが、マーケットを明確に把握し、消費者に届ける意識を持って農産物の加工に取り組みましょう。

また無理な生産・加工体制をとり、農作物生産が円滑に進まなくなってしまっては本末転倒です。加工過程を追加できるだけの余裕をもち、身の丈にあった生産・加工体制を意識しましょう。

 

店舗販売を行う場合のポイント

店舗で販売する場合には、店舗に足を運んでくれるお客様に購入していただける仕掛けが必要です。第一に、看板商品となる商品やこだわりの商品を揃えることが重要です。

また客を呼び込むため、情報発信することも重要です。

SNSなどを活用し、積極的に宣伝活動を行いましょう。お客様が共感できるストーリー作りも大切です。その商品が出来上がるまでの物語や背景を伝えることができれば、その商品を長く愛してもらえる可能性が高まります。

お客様が手に取るきっかけにもなるので、パッケージや表示にもこだわりましょう。どんなに商品内容が素晴らしくても、お客様の手に届かなければ意味がありません。

 

通信販売を行う場合のポイント

通信販売を行う場合には、お客様と直接やりとりできない分、より密なコミュニケーションを必要とする場面が生じることでしょう。

対面ではないとはいえ、丁寧な接客を心がけ、リピーターを獲得できるよう努めましょう。またお客様が訪問するホームページの使い心地やデザインにもこだわりましょう。お客様の心を商品購入に誘導するためには、ホームページから離脱させないことが重要です。通信販売には商品現物を手にとって見られないというデメリットがあります。通信販売を行う場合には、そのデメリットを認識したうえで、お客様を満足させる販売体系を構築する必要があります。

 

農山漁村の雇用や所得を確保することが期待されている「6次産業」。

1次産業が2次産業・3次産業と連携することで生まれる新しいビジネスや営業形態は、地域ごとの資源を活かすことにもつながるので、農業従事者のみならず、地域の活性化にもつながるといえます。消費者の食に対するニーズも考慮した、魅力的な「6次産業」商品が増えていくといいですね。

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