農業のコスト削減につながるか!?農業生産資材価格の『見える化』

農業のコスト削減につながるか!?農業生産資材価格の『見える化』

農業経営を続けるためには、利益を得ることが必要不可欠です。その利益を増やすためには、売り上げを拡大するか生産コストを削減することが重要です。現代の農業経営の課題には、この「生産コスト」の高さが取り上げられています。そこで注目されているのが農業生産資材価格の「見える化」です。農薬や肥料といった農業に必要な農業資材コスト削減に、「見える化」がどのように影響するか、ご紹介していきます。

 

 

農業生産資材価格の見える化

【農業のコスト削減につながるか!?農業生産資材価格の『見える化』|画像1】

 

農林水産省は、現代の農業経営上の課題である「コスト高」を解決すべく、農業生産資材価格の「見える化」に努めています。農業従事者が農薬や肥料、農業機械等を購入する際、資材の価格情報等を可視化できるようにすることで、その人にとって最適な農業資材が選択できるようにすることを目的としています。農林水産省は農業生産資材価格「見える化」推進事業検討委員会を立ち上げています。また検討委員会の議論等を踏まえ、農業資材の価格やサービス情報を比較できるウェブサービス「AGMIRU(アグミル)」(ソフトバンク・テクノロジー株式会社)が構築されました。

「AGMIRU(アグミル)」は農業者が求める農業資材の条件を登録することで、販売業者からの提案を受けることができるというサービスです。販売業者が提案をしてくれるため、価格だけではなく、納期やアフターサービスといった、オンラインショッピングサイト等では聞きづらい部分も交渉することができます。「販売業者とのマッチングサービス」というとわかりやすいかもしれません。マッチング完了までの流れは以下の通りです。

  1. 必要情報や農業資材に求める条件を入力
  2. 条件にマッチした販売業者があなたに提案
  3. 気になる業者とオンライン上で交渉
  4. 交渉後、条件に見合う販売業者を選定

 

 

コスト削減事例

【農業のコスト削減につながるか!?農業生産資材価格の『見える化』|画像2】

 

農業者自身が意識して行動を起こすだけでも、コスト削減は期待できます。「AGMIRU」等を利用して最適なものを選択することももちろんおすすめですが、以下のような方法もぜひ取り入れてみてください。

 

購入チャネルを複数もつ

農業資材のコスト削減には「農業資材を購入する場所を複数もつ」ことがおすすめです。買うものによって購入先を変えるだけでも、価格に差を生み出すことができます。

例えば価格重視で農業資材を安く手に入れたい場合には、商品を大量に仕入れ、安く売ることができる販売店での購入がおすすめです。ホームセンター等で販売されている資材は、比較的安価に手に入ります。

一方で、専門性の高い資材を手に入れたい場合には、少々価格が高くても専門店や農家御用達のお店に出向くことをおすすめします。ホームセンターに比較すると価格は決して安くないかもしれません。しかしそこで商品を販売するスタッフの知識に期待ができます。土壌分析や畑に関するアドバイスをくれる店舗の場合には、本当に必要なものだけを選ぶことができるでしょうから、結果的にコストパフォーマンスは高くなるはずです。またお店を選ぶ際には、商品購入後のアフターケアがどれだけ手厚いかで決めるのもおすすめです。

 

ジェネリック農薬を活用する

近年、農業資材のコスト削減で注目されているのが「ジェネリック農薬」です。ジェネリック農薬は先発商品の特許が切れたあとに販売されるもので、先発商品と比較して低価格なのが特徴です。低価格ではありますが、有効成分や効き目は同じです。ジェネリック農薬は農薬開発・販売側にとっても「開発費を抑えられる」という点で魅力的です。

ジェネリック農薬が実用化されれば、競合農薬の価格を下げる可能性も高まるとも言われています。JA全農が開発した「ペンコゼブ」と「ジェイエース」と呼ばれるジェネリック農薬は、競合製品の価格を引き下げた実績があります。「ペンコゼブ」はJA全農が開発した国内第一号のジェネリック農薬で、先発商品の有効成分「マンゼブ」を使用しながらも先発商品の約17%もの価格引き下げを可能にしました。また園芸作物用の殺虫剤「ジェイエース」も、先発の有効成分「アセフェート」を使用しながら、先発より約15%価格を引き下げて販売されています。

 

 

「見える化」に今後も注目

【農業のコスト削減につながるか!?農業生産資材価格の『見える化』|画像3】

 

本記事では農業生産資材価格の「見える化」に着目し、農業生産コストの削減を目標とした農林水産省の動きやコスト削減事例について紹介してきました。しかし「見える化」の効果はコスト削減だけに留まりません。

「まるみえアグリ」(農林水産「見える化」シリーズ)は、先で紹介した「AGMIRU」だけでなく、販売先のマッチングサービス「agreach」や農業研究成果を知ることができる農業研究の見える化システム「アグリサーチャー」などが紹介されています。特に「アグリサーチャー」では、

  • 作物
  • 畜産動物
  • 生産技術
  • 病虫害・雑草・生理障害・温暖化
  • 省力化・効率化・経営
  • 測定・分析技術
  • 加工・保存技術
  • 地域

と豊富なカテゴリが用意されており、そのカテゴリ別の研究成果を見ることができます。また”興味のある成果・技術を探して研究者に相談する”ことも可能なサービスのため、農作物栽培に関する悩みや疑問点解消に役立つ「見える化」と言えるでしょう。

 

参考文献

  1. 農業資材価格の「見える化」 農林水産省
  2. 農業生産資材価格「見える化」推進事業 農林水産省
  3. AGMIRU
  4. 資材価格「見える化」 下旬に比較サイト稼働 農水省「アグミル」 農トピ
  5. 「儲かる農業」~資材コスト削減のポイントとは~ マイナビ農業
  6. 「日本の農業」の未来を左右する新しい農薬づくり 未来開墾ビジネスファーム
  7. 農業競争力強化プログラム(概要) 農林水産省
  8. まるみえアグリ(農林水産省)

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