日本の農業は、高齢化や後継者不足、それに伴う耕作放棄地の増加など、さまざまな問題を抱えています。
しかし食の安心・安全志向の高まりから、消費者が有機農法などこだわりの栽培方法で育てられた野菜に関心を抱いているように思えます。消費者の志向に合致さえすれば、価格帯の高い農作物を抵抗なく購入する人もいるようです。
現代の農業が抱える問題と、現代の農業への在り方をふまえ、日本農業の打開策として「農作物に付加価値をつけること」が注目されています。
本記事では、効率・生産性を高める付加価値の付け方について紹介していきます。
付加価値の高いオランダの農業事例
まず注目すべき事例としてオランダの農業を挙げます。農林水産省も、昨今注目を集めるオランダ農業の施設園芸をモデルとした、大規模な施設園芸の立ち上げを実現させようと動き出しているようです。
オランダの国土は九州と同じくらいのサイズです。国土面積のうち約44%が農用地となっていますが、その規模は日本の4割程度だと言われています。そのうえ「人件費が高い」という特徴もあります。しかしそんなオランダ画は、アメリカに次ぐ世界第2位の農産物輸出国であり、狭い国土でも高い収益をあげることができています。
付加価値を付けるポイント
オランダが付加価値の高い農業を可能にした理由には、大きく分けて3つの要因があります。
・技術力
・品目の特化
・農家の支援体制
オランダの農業では、狭い国土を利用して農業を行うために、農作業の自動化を推進しています。施設園芸で環境を制御することにより生産効率と安定性を行動させました。
いわゆる「スマート農業」を活用し、温度や湿度、光量、二酸化炭素濃度等、農作物の生育に関係するあらゆる環境条件を制御しています。有名な農産物であるトマトの例ですが、狭い国土ながら、トマトの単位面積当たりの収量は日本の3倍以上であると言われています。
また品目を特化したことも、効率化をあげた要因です。施設園芸の栽培面積の約8割を占めるのがトマト、パプリカ、キュウリの3品目だと言われています。
収益性の高い品目に集中することで、生産性アップにつなげたようです。品目の特化は、日本においてはコメに値するものかと思います。ただし新しい農業の形として「少量多品目栽培」なども注目されていますから、この点に関しては、経営規模と相談する必要があるかもしれませんね。
最後に支援体制です。オランダでは、農業技術コンサルタントなどの企業が、個別に収益事業を展開していると言います。
日本では、農業指導や金融・流通等の機能を農協などがすべてを担うのが主となっていますが、各々に関連した企業が事業展開することで、農家と企業がwin-winの関係になりやすいようです。
日本でも、農業従事者を支援するために補助金制度などが公的に用意されていますね。ただし、農家の育成環境の整備・研究開発への投資への支援が手厚いところが、日本との大きな違いでしょうか。
注目される新しい農業の形「スマート農業」
日本で活用しやすい事例としては、やはり「技術力の向上」で挙げた「スマート農業」の活用ではないでしょうか。
施設園芸が多いオランダでは、温度や湿度を管理しやすい施設園芸の特徴をフルに活かして、環境整備をITで管理しています。農業の在り方をハイテク化することにより、狭い国土、人件費の高さと関連づけられる人手不足を解消し、農作物の大量生産を可能にしました。
「スマート農業」の利点は、作物の管理だけにとどまりません。出荷後の流通・販売ルートも管理できますから、消費者にとって安心・安全な体制が整っています。
日本が目指す高付加価値産業としての農業
日本が目指す高付加価値産業として、すでに取り組みが行われているのは、「6次産業」ではないでしょうか。
6次産業は、生産だけでなく加工、販売までを1つの業者が行うことを指します。
近年では、生産した農作物を自ら加工し販売する人も決して少なくありません。6次産業化することで、農業者には価格を決定することができる、規格外品やキズがついた商品、余剰品も活用できるという利点があります。「生産〜販売までを行う」となると多大な労力が必要に思えますが、だからこそ「スマート農業」が存在するのです。最も労力がかかる過程をITで管理すれば、自身が最も力を入れたい過程に力を注ぐことができます。
また現代では、農作物の付加価値を高めるため、品種を開発する段階で産地などと連携をとり、消費者のニーズに応えようとする試みもあります。
現代の農業は常に変化し続けています。本記事では、注目されるオランダ農業を例に付加価値の付け方をご紹介していきましたが、今回紹介した以外にも付加価値を付ける方法はたくさん眠っていることでしょう。今後の農業の在り方に、期待が高まりますね。