多品目少量栽培について。農を営む人たちの変化

多品目少量栽培について。農を営む人たちの変化

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現代社会において、第1次産業のひとつ「農業」の在り方は変化を遂げています。
生産のみならず、加工・販売まで一挙に行う「6次産業」やAIやIoT技術を駆使したスマート農業など、従来の農業の在り方を覆すような新しい農業が浸透し始めています。

本記事で紹介する「多品目少量栽培」も、現代の働き方を象徴するかのような新しい農業の形と言えます。

今までの農業は「儲からない・軌道に乗るまで時間がかかる・初期費用がかかる」など、新規参入者への障壁があると言われていましたが、多品目少量栽培は、この従来の価値観を覆すものです。

 

多品目少量栽培とは

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その名の通り、さまざまな農作物を少量ずつ栽培する方法です。
従来のように、広い区画を使って1つの農作物を育てるのではなく、小さな区画でさまざまな野菜を栽培する、いわば「家庭菜園」の風景によく似た栽培方法です。

・メリット
リスクが分散される
例えば大型の台風が直撃した際、田畑に影響が及びます。もしもトマトの専業農家だった場合、支柱で支えていたトマトが台風で倒れてしまったり、熟した果実が雨に当たったことで割れてしまったり、畑が冠水して病気になってしまったりと、収益の元となるトマトが「全滅」してしまう可能性が浮上します。

しかし多品目であれば、どれかが台風でダメになったとしても、台風の影響をあまり受けない野菜を出荷できる可能性があるのです。農作物の全滅を免れることができれば、免れた野菜を販売することで利益を得ることができるのです。利益が0になるリスクを分散することができるのは、「多品目栽培」ならではです。

病害虫対策にもなる
農作物には虫害に強い種もあれば弱い種もあります。
しかし組み合わせて作付けすることで、虫害に遭いにくくすることもできます。この「コンパニオンプランツ」としての活用は虫に限らず、乾燥や湿害対策にも応用できます。

・デメリット
労働効率が悪くなる
生産効率をあげるのであれば、広い面積で同一品目を育てたほうが圧倒的に良いです。
品目が多いと、出荷準備(袋詰めなど)の手間が増えます。作業効率をあげないと経営が成り立たなくなってしまうリスクは、この栽培方法の最大のデメリットと言えます。

 

作業を省力化する工夫

メリット・デメリットのある「多品目少量栽培」ですが、デメリットである作業効率の悪さをカバーする例を紹介します。

神奈川県にある今井農園の場合は、苗の段階で害虫予防のための薬剤を与えることで、定植後の圃場への除草や薬剤散布などの手間を省くようにしています。
雑草や病害虫に負けない苗にしっかり育てることに集中することで、定植後の世話の負担を軽減しているのです。

また作業効率アップのために、取引先にも協力を仰いでいます。
取引先で必要な野菜をあらかじめリスト化してもらうことで、不足や売れ残りが発生するリスクを減らしているのです。
また出荷できる野菜をリスト化し、それを注文表として取引先に送ることで、当日朝採りした新鮮な野菜を効率よく配達するように心がけていると言います。

しかし例に挙げた今井農園のすごいところは、作業の効率化だけではありません。
顧客へのこまやかな対応も見事です。
取引先に必要になる野菜を年間リスト化してもらうとはいえ、週に2回受け付ける注文表には味や見た目などの特徴も記載していると言います。作業効率をあげる部分と、顧客への手厚い対応をすべき部分にメリハリがあることも「多品目少量栽培」を成功させるコツなのかもしれません。

 

多品目少量栽培だからできること

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多品目少量栽培は、注目されている「6次産業」のように自分で生産~販売までを請け負うケースが多く見られます。しかし、だからこそできることがあります。

・野菜の値段を自分で決められる
大規模栽培ではない分、直接販売になるのであれば、野菜の値段を固定化することも可能です。通常市場では相場が決められています。
そのため、時期によっては市場で取り扱う野菜よりも安くなってしまう場合もあります。が、相場が下がっても安く買い叩かれる心配がないとも言えます。

また自分自身で決めた価格に固定してしまえば、年間の売上見通しを立てることも容易にできます。この特徴は書いて側にもメリットがあります。値段を固定化している農家から買えば、市場野菜が高騰したとしてもあらかじめ決められた価格で野菜を買うことができます。

・マルシェなどで直接コミュニケーションが取れる
食の安心・安全志向の高まりから、生産者の姿を確認したいと望む消費者も増えてきているように思います。
「多品目少量栽培」であれば自分で販売することが多いため、マルシェなどに出店することで、消費者と直接コミュニケーションをとることが出来ます。
もちろん購入を促すためには“販売”のテクニックが必要になりますが、生産者の顔を見たいと願う消費者にとっては「マルシェ出店」は嬉しい出来事だと考えます。

販売する際には、お客様に対して押しつけにならない程度で積極的に声をかけましょう。
どのような野菜なのか、どのようなこだわりがあるのか、といった内容を伝えていきましょう。会話が盛り上がれば、お客様も「ぜひこの店から」と購入してくれるかもしれません。

販売を促進するためには、

・お客様の手に取りやすさ
・彩りや見やすさを考えたディスプレイ
・読み取りやすい値札やポップでの特徴&食べ方の案内

など消費者側に沿った工夫を凝らす必要がありますが、ほんの少しの工夫で販売しやすさがぐっと変わりますから、「多品目少量栽培をやってみたい」「マルシェ出店で直接販売したい」という方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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