新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染拡大防止のための「外出自粛期間」や新型コロナを想定した「新しい生活様式」などで、人々の生活のありかたは変化を余儀なくされました。
新型コロナの影響は農業界にも及んでいます。日本政策金融公庫が融資先である農業者を対象に行った「農業景況調査(令和3年1月調査)」によると、米や野菜など「生活必需品農産物」に分類される農産物を生産している個人経営の農家は、新型コロナの影響をあまり受けずに済んでいます。しかし大規模な生産を行なっている農業法人の回答には
- 2割以上の減収 14%
- 2割まではいかないが減収を見込んでいる 49%
- 何かしら影響がある 63%
とあり、影響が全く及んでいないわけではないことは明らかです。
インターネット販売はビジネスチャンスになる!?
同調査内容で注目したのは「コロナ禍により取引量が増えた販売先について」です。取引量が増えた販売先について、回答者の7割が「特に変化はなかった」と回答していますが、増加した販売先(いずれも1割未満の低い割合ではありますが)には、
- 市場・農協への出荷 9.8%
- スーパーなどの小売業者 8.0%
- インターネット販売 6.8%
が挙げられています。
中でも最も低い割合なのが「インターネット販売」。コロナ禍でのインターネット販売の取り組みについてのアンケートでは、「関心がない」という回答が最も高い結果となっています。
しかしコロナ禍の消費者サイドから見たアンケート調査を見ると「インターネット販売」には新しい販路として期待が感じられます。例えば、タキイ種苗株式会社が実施した「2020年度 野菜の総括」では、回答者である男女310人の約半数が「非接触」での野菜購入経験があり、具体的な購入先には「無人直売所」や「スーパーなどの宅配サービス」のほか、「農家直送品」が挙げられています。
近年、農家が直接消費者に販売できるオンライン通販サービス『ポケットマルシェ』や『食べチョク』の認知度は消費者の間でも高まっています。インターネット販売に「関心がない」という回答割合が高い結果に反して、インターネット販売の需要は高まっているのです。
2019年のデータによると、日本の個人のインターネット利用率は89.8%(出典元:総務省|令和2年版 情報通信白書|インターネットの利用状況)。年齢階層別で見ると13〜69歳までの層で9割を超えており、60歳以上のインターネット利用率が上昇しているとあります。電話やFAXなどを用いた販売方法がダメ、というわけではありませんが、これほどまでに利用率が高いインターネットを活用しない場合には、販路がどうしても限られてしまいます。インターネット販売なら、日本全国に販路を広げることができ、時間を気にしない営業活動が可能となりながらも、一度ホームページや販売フォーマットを作成してしまえば、農作業に集中できるという利点があります。
インターネット販売ではどんなものが売れているのか
『農業ビジネス ベジ 2021 Vol.32 冬号』には先で紹介した『ポケットマルシェ』と『食べチョク』の代表らが、コロナ禍による変化や売れ筋商品について答えています。『ポケットマルシェ』も『食べチョク』も「スーパーでは手に入りにくい」が共通のキーワードです。ただ希少品種である、というだけではなく、スーパーでは手に入りにくい少し珍しい野菜やそれらを体験できるセット商品などが消費者の心を掴んだ、とあります。
後編では、実際にインターネット販売を取り組もうと考えている人にぜひ知ってほしい「売れるコツ」についてご紹介していきます。
参考文献
- 今こそ見直されるべき農業ビジネスの可能性(第十一回)|D4DR(ディーフォーディーアール)株式会社
- 農業景況調査 令和3年1月調査 日本政策金融公庫
- 2020年の『野菜の総括』を発表|インフォメーション
- 『農業ビジネス ベジ 2021 Vol.32 冬号』(2021年2月25日、イカロス出版)