あらためて知るネット販売のメリット・デメリット。

あらためて知るネット販売のメリット・デメリット。

近年、農作物のネット販売は急成長を遂げています。たとえば、産直通販サイト「食べチョク」では、生産者1軒あたりの月間最高売上が2020年から2023年の3年間で平均100万円も収入が増えるなど、売上が右肩上がりとなっています。また2024年9月時点では月間最高売上が2,417万円で、2023年11月に行われた調査と比較して1.3倍という最高記録を更新しました。加えて、登録する生産者数も1万軒を突破しています。

このような背景から、農家にとってネット販売は今や欠かせない販路の一つとなりつつあります。特に新型コロナウイルスの影響を受けて、オンラインショッピングがますます一般化し、消費者に直接野菜を届ける手法が農家にとって大きなビジネスチャンスになっています。しかし、成功するためには売れやすい野菜の選定や適切な販売方法が重要です。

 

 

ネット販売を行うメリット

あらためて知るネット販売のメリット・デメリット。|画像1

 

ネット販売には、以下のようなメリットがあります。

低コストでのスタート

ネット販売は、初期投資が少なくて済みます。物理的な店舗を持つ必要がなく、インターネット上にショップを開設するだけで始められるからです。また、利用する販売プラットフォームにもよりますが、顧客対応や決済などを一括して管理できるものを利用すると、煩雑な業務負担を軽減することができます。

価格の自由設定

生産者自身が直接、一般消費者に販売するため、価格を自由に設定できる点も大きな利点です。生産者自身が高品質な農作物の価値を直接アピールすることで、それに見合った価格での販売が可能になります。特に高付加価値の商品や希少な品種を販売する際、ニーズの分析やアピール方法への工夫は必要になりますが、高価格帯での販売が期待できます。

フードロスの防止

ネット販売を通じて、余剰分の野菜や規格外の「訳あり商品」を販売することができます。形が悪かったりサイズが不揃いだったりと市場に出すのが難しい野菜も、ネット販売を活用することで消費者に届く可能性があります。消費者の中には「安く新鮮な野菜が買えるなら」という理由で、訳あり商品を好む人も多く、ネット販売ならではの強みを活かせます。

 

 

ネット販売で売れやすい野菜

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ネットで売れやすい野菜には、いくつかの特徴があります。

セット販売や加工品

季節の野菜を詰め合わせた「おまかせ野菜セット」や、保存性の高いジャムやピクルスのような加工品などは売れやすい傾向にあります。セット販売や加工品の販売は消費者にアピールしやすいだけでなく、多品種をまとめて販売することや加工することで商品の付加価値をあげて単価を引き上げることができます。

単価の高い野菜

単価が高い野菜は、少量でも利益が見込めるためネット販売に向いています。例えば、マンゴーのような希少性があり、高単価な作物は、少ない注文数でも利益を確保しやすいです。さらにブランド化すれば、より高額で販売できる可能性もあります。

地域特産品や珍しい野菜

地域特有の作物や珍しい品種の野菜も、ネット販売では高く売れることが多いです。特に、スーパーでは手に入りにくいヨーロッパ野菜などは、価格相場が消費者にあまり知られていないこともあり、高単価でも販売しやすい商品です。栽培が難しく、市場で希少性がある野菜などは、やや高価格帯で販売するのも有効といえます。

鮮度を維持しやすい野菜

収穫後の鮮度が重要視される野菜もネット販売との相性が良いです。消費者にとって「スーパーよりも新鮮な状態で届く」という付加価値が売り上げにつながりやすいです。具体的には枝豆やしいたけなどがあげられます。なお、枝豆やしいたけは小さく軽量なため、送料が抑えやすいという点も魅力的です。

 

 

ネット販売を行う際のデメリット・注意点

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ネット販売のメリットや売れやすい野菜について紹介しましたが、もちろんデメリットや注意点も存在します。

発送と梱包に手間がかかる

野菜のネット販売は、商品を登録したり受発注管理をしたり、そのほか梱包作業などの手間がかかります。特に、野菜の鮮度を維持するためには迅速な発送が求められるため、効率的に発送する流れを構築する必要が生じます。またネット販売では、一般消費者からの小口注文が多くなる傾向があるため、一件ごとの作業量が増えることで出荷にかかる手間が利益を圧迫する可能性があります。

送料の問題

野菜には重量がありますから、送料が高くなることが課題といえます。特に野菜の単品販売には難しい面があります。たとえば、300円の白菜に500円の送料を上乗せすると、消費者は購入をためらいがちです。そのため、この問題を解決する手段には、セット販売や加工品と組み合わせたり、単価の高い野菜を選んだり、送料を抑えるために軽量な野菜を選ぶなどの工夫があげられます。

顧客とのコミュニケーションの難しさ

ネット販売では、直接顧客と対面することがありません。そのため、生産者は自分たちのこだわりや商品の特徴をしっかりとアピールする必要があります。商品の説明文や写真、レビューの活用を通じて、顧客に安心感を与えることが重要といえます。また、顧客の声を積極的に取り入れることはリピーターを増やすことにつながります。

訳あり品販売時の注意点

“ネット販売を通じて、余剰分の野菜や規格外の「訳あり商品」を販売することができる”と紹介しましたが、販売する際、もしすでにネットショップ上で高品質、高価格帯の野菜等を販売しているのであれば、それらとはっきり区別して販売するように心がけてください。

なぜなら、もし値下げした訳あり品が目立つ形で販売されていた場合、価格の安い訳あり品ばかりが売れてしまう可能性があるからです。

販売する際は、期間限定や数量限定などの「限定品」として販売したり、「訳あり品」と記すのではなく、規格外品ならそのサイズに合わせた商品名(大きな〇〇・小粒品など)をつけて、特徴のある商品として値段をあまり下げずに販売したりするのがおすすめです。

 

参考文献:折笠俊輔『農家の未来はマーケティング思考にある EC・直売・輸出 売れるしくみの作り方』(イカロス出版、2021年)

参照サイト

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