販売機会を増やし、収益を増やす方法の一つに、生産者自ら「個人直売所」を運営し、消費者に農産物を販売する方法があります。
個人で運営すると聞くと、「複雑な手続きが必要なのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、小規模なものであれば比較的簡単に開業することができます。
本記事では「個人直売所の始め方」と題し、個人直売所を始める上で必要な準備について紹介していきます。
個人直売所に許可や届出は必要?
結論から言うと、販売場所や販売物次第で許可や届出が必要になります。
販売場所について
個人直売所は圃場や自宅の敷地内に作られているものが多いですが、「自宅の敷地内」であれば、許可や届出は必要ありません。
圃場の場合、台や棚、床置きで販売する場合や屋根がある程度の簡易的な小屋を土の上に建てたぐらいであれば問題ないものの、直売所の規模によっては「農地※1」の扱いや「相続税等納税猶予制度※2」に関わってくる可能性があります。
※1
農地とは「耕作目的に供されている土地」を指します。先で”農地の扱いに関わる”と書きましたが、それは「農地法」に関係します。
農地法とは「農地の保護や権利関係に関する基本的な法律」のこと。農地を守る目的で制定されているため、農地の売買や貸し借り、転用などを行う場合には、農地法に基づく許可や届出が必要です。
圃場に個人直売所を設ける場合、その規模によって許可や手続きが必要になると書いたのはここに起因します。
本サイトでは、圃場に農業用倉庫を設置するために必要な手続きを紹介しています。その事例を引用し、設置した農業用倉庫を直売所として活用した場合に必要な許可、届出について紹介します。
圃場に農業用倉庫を建てる場合、原則的には「農地法」の定めにより許可が必要です。ただし許可が必要かどうかは
- 誰の農地に
- どの規模のものを
建てるのかによって変わります。
自分の農地であれば、
- 200㎡未満 農地法4条許可は不要
- 200㎡以上 農地法4条許可は必要
となります。
参考:農業用倉庫を建てるには?土地地目変更登記と建築確認申請方法
※2
相続税等納税猶予制度は、
農地を相続したまたは贈与された後継者に対して、農地にかかる相続税または贈与税の納税を猶予する制度
です。
この特例を適用するには、
- 後継者が農業を続ける
- 農業を行う人に農地を貸し出す
などが条件になります(また贈与者や受贈者にも要件がありますが、ここでは割愛します)。
そして、納税の猶予が取り消される場合の中に、個人直売所の規模に関わるであろう項目があります。
(注)譲渡、貸付、転用、耕作放棄した農地の面積が全体の20%を超える場合は、猶予されていた贈与税の全額を、20%以下であれば猶予されていた贈与税の一部を納めなければなりません。
圃場に、例えば「床のある」直売所を設けたい場合などには、地域自治体の農産課に相談することをおすすめします。
販売品目について
販売品目の許可や届出も、その品目次第です。
例えば、収穫した野菜などをそのまま販売するのであれば、許可や届出は必要ありません。
ただし、手作りの味噌や漬物、ジャムなど、「農産物加工品」を販売する場合には、営業許可や届出が必要になります。
「東京都福祉保健局」のホームページでは、保健所への営業許可が必要な品目を確認することができます。
営業開始までの大まかな流れ
営業許可が必要なものがある場合には、以下の流れになります。
農産物加工品の販売を考えている場合は、まず地域の保健所に相談することから始めましょう。
簡易的なつくりの「無人販売所」や「コインロッカー型直売所」なら、許可や届出なしに始められます。
簡易的なつくりでよければ、
- 野菜を置く棚
- 雨よけの屋根
さえ付ければOKです。
ただし「無人」だからこそ、安全性と衛生面を考慮した販売を心がけましょう。
また個人直売所、特に無人販売所は盗難被害に遭いやすいです。料金回収箱をそのまま持ち去られる事例もあるので、
- 監視カメラを設置
- 商品や料金回収箱が簡単に持ち去られないような設置
など、盗難対策に工夫が必要です。
「コインロッカー型直売所」を設置すれば、「コインロッカー型の直売所を用意する」という初期費用はかかりますが、野菜やお金の盗まれる不安をなくすことができます。
参考文献