農業分野の「働き方改革」から学ぶ。労働時間、労働環境の改善事例

農業分野の「働き方改革」から学ぶ。労働時間、労働環境の改善事例

「働き方改革」は、働く人がそれぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようになるために、政府が行っている法改正などの取り組みを指します。そんな働き方改革は農業分野においても求められています。

たとえば農業は、天候などの自然条件に左右されるといった特性から、労働基準法が適用されませんが、繁忙期と閑散期で労働時間が大きく変動することもあり、近年ではフレックスタイム制の導入やシフト制の導入、労働時間の記録や管理を徹底するといった、柔軟な働き方の導入が求められています。

そこで本記事では、農林水産省が公開する資料「農業の『働き方改革』優良事例集」より、労働時間や労働環境の改善に役立つ事例を一部ご紹介していきます。

 

 

フレックスタイム制の導入

農業分野の「働き方改革」から学ぶ。労働時間、労働環境の改善事例|画像1

 

フレックスタイム制とは「労働者が⽇々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることによって、⽣活と業務との調和を図りながら効率的に働くことができる制度」を指します(出典元:フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引き)。

優良事例集の中で、フレックスタイム制を導入した農業経営体によると、1年単位のフレックスタイム制の導入により、繁忙期に月平均30時間程発生していた時間外労働の削減が期待できること、また1ヶ月単位のフレックスタイム制の導入により、季節や担当作業ごとに異なる出退勤時刻を社員自ら決めることができる自由な働き方が可能になったことなどが挙げられています。

フレックスタイム制の問題点やその対策についても紹介されていました。フレックスタイム制にすると、出退勤時刻が異なることから、社員同士のコミュニケーションが不足し、作業進捗や課題の共有などが円滑にできなくなるといった難点もあります。

その対策にはコアタイム(1日のうち必ず就業しなければならない時間帯)である昼間に、ランチミーティングを行うなど、コミュニケーションが取れる時間を設けること、SNSなど社員全員が共有できるサービスを活用して作業進捗や販売状況などを共有することなどが挙げられています。

 

 

データの共有により生産性を向上

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先で紹介したSNSの活用もその一部ですが、社員同士が作業の進捗や販売状況などを共有することが生産性の向上につながっている事例が数多く見られました。

たとえば6次産業化に取り組むある農業経営体では、業務の幅が広がるにつれて、社員同士の情報共有やコミュニケーション不足が課題となっていきました。そこで日報アプリを導入し、社員がスマートフォンを使って日報を入力することで、異なる業務に携わる社員であっても情報が共有できるようにしました。業務上の課題が理解しやすくなり、社員同士の協力も得やすくなって解決策が早く見つかるようになった、とあります。

情報を共有する方法はアプリやサービスを活用しなくても可能です。たとえば作業記録用の紙面を作成し、そこに当日作業した内容等を記すだけでも、情報共有は可能です。ある経営体は、作業した人が記録シートに蛍光マーカーで色付けするだけで当日の作業部分が把握できるようにしています。作業を行う人の労働時間や作業量を確認することができ、労働効率が「見える化」されます。「見える化」がなされれば、事前に作業の進捗具合を予測することができますし、遅れている作業への対応もしやすくなります。

 

 

システム化により生産性を向上

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ある経営体は受発注等をシステム化し、業務の効率化をはかりました。システム導入前は、毎日150件ほどの受注が電話とFAXで行われていました。しかし顧客からの発注忘れや電話対応時に起きる聞き間違いなども発生しており、規模を拡大する上で業務の効率化が必須になっていきました。そこでパソコンやスマートフォン上で確認・修正可能なシステムが導入されました。受発注業務が効率的に行えるようになっただけでなく、電話応対による顧客サービスの質を向上させ、顧客満足度をあげるなどのプラスの効果も出ています。

 

 

規格の簡素化により生産性を向上

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農産物のサイズ区分を減らす、大型機械を活用する、販売先と協力してコンテナやパレットを標準化することなども生産性向上に役立ちます。

 

 

省力化とコミュニケーションがカギ!?

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優良事例集を見てみると、働き手のモチベーションをアップさせる取り組みに力を入れている経営体も多く見られました。作業の省力化と社員のコミュニケーションが、農業分野における「働き方改革」のカギといえるかもしれません。

「農業の『働き方改革』優良事例集」には、「ある社員の一日」と題し、事例を提供している農業経営体の社員がどのように働いているかといったデータも公開されています。経営体の事業概要も規模もさまざまなので、参考事例を探してみてはいかがでしょうか。

 

参考文献

  1. 農業の「働き方改革」優良事例集(PDF
  2. フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引き

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