スマート農業導入時の資金調達について

スマート農業導入時の資金調達について

スマート農業は農業生産性や効率を劇的に向上させる可能性を持つ一方で、その導入には高額な初期投資が必要となる場合が多いです。特に高度な技術を導入するためには、従来の農業設備よりも多くの費用がかかることが一般的です。

このため、スマート農業を導入するための資金調達は非常に重要な課題となります。

そこで本記事では、スマート農業技術を導入するにあたって、考えられる資金調達の方法についてご紹介していきます。

 

 

初期投資を抑える方法を探る

スマート農業導入時の資金調達について|画像1

 

スマート農業技術の導入には初期投資が必要となる場合が一般的ですが、スマート農業機器や設備を自ら所有する必要が本当にあるのかを考えることも重要です。

購入ではなくレンタルやリースを活用することで、初期投資を抑えつつ、最新の技術を導入することができます。この方法であれば、最新技術を柔軟に取り入れることができるというメリットがあります。

たとえば、モニタリングや農薬散布を行うためにドローンを導入する場合、必ずしも自分で購入して運用する必要はありません。代行サービスなどを活用するのも選択肢の一つであり、これらのサービスを活用することで導入費用を抑えることができます。

 

 

補助金を活用する

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補助金は、スマート農業技術の導入において非常に大きな助けとなる資金源です。国や自治体が提供する補助金を活用することで、導入コストを大幅に削減することが可能です。

ただし、補助金をあてにしすぎることは避けるべきです。また、補助金には申請条件や認定要件があり、制度によっては当初計画から変更が認められないこともあります。そのため、事業計画を立てる際には、補助金の支給条件を詳細に把握し、柔軟な経営を行えるようにすることが重要です。

さらに、補助金の対象は、認定農業者や法人に限られることがあり、一般の法人や個人には対象外となる場合もあります。このため、利用可能な補助金の対象となるかどうかを事前に確認することが求められます。

 

 

融資を活用する

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他の産業に比べ、農業事業には優遇された金融制度があります。たとえば日本政策金融公庫の「スーパーL資金」は、非常に低い金利で融資を受けることができます。事業計画がしっかりと作成されていれば、比較的借りやすいのもメリットです。

ただし、これら政策的な融資には注意点もあります。たとえば、融資は建物や施設に対してのみ行われ、運転資金の調達には使えない場合があります。

運転資金が必要な場合は、民間の金融機関からの融資の併用も検討すべきでが、民間金融機関の融資を受ける場合には取引実績などが重要視される場合が多いです。

政策融資であれ、民間融資であれ、事前に計画を立てて十分に準備する必要があります。

 

 

出資(クラウドファンディングなど)を活用する

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出資による資金調達も選択肢の一つです。ただし、出資による資金調達には、出資者との契約内容やリスク管理が重要です。出資元との信頼関係や、事業の進行状況に応じたリターンの提供が求められるため、慎重に計画を立てる必要があります。

また近年、資金調達方法の一つとしてクラウドファンディングが注目を集めています。

クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募る仕組みです。なお、クラウドファンディングは資金調達だけでなく、商品やサービスの認知度向上やPR効果も期待できる点がメリットとしてあげられます。

クラウドファンディングを活用する際は、初期費用がかからない成果報酬型のプラットフォームを利用することで、自己資金が少なくてもプロジェクトを開始できます。また、支援者の存在が事業の信頼性を高め、金融機関からの融資を受けやすくなるケースもあります。

とはいえ、クラウドファンディングはプロジェクトの作成やプロモーション、支援者へのリターン対応などの作業が必要になることから、準備や運営の手間がかかるといったデメリットもあります。また資金調達までに3ヶ月程度要することが一般的です。

補助金や融資の活用と同じく、クラウドファンディングを成功させるためには事前準備が重要です。

また、自己資金による資金調達ももちろん選択肢に入ります。特に異業種から参入する場合には、本業の資金を活用することができます。

 

 

スマート農業の普及を促進する新法に期待

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昨年(2024年)の3月7日付の日経新聞の記事では、日本政府がAIやドローンを活用するスマート農業の普及を促進する新法を閣議決定した、とあります。新法では、機器導入を希望する生産者や技術開発者に対し、融資や税制優遇が提供されるとのこと。今後20年の間に農業従事者が4分の1に減少すると予測される中、生産性向上につながるスマート農業の普及を広めるために、長期低利融資や税軽減措置、ドローン飛行許可の簡素化などが実施されます。

スマート農業の導入には多くの資金が必要となりますが、補助金や融資、税制優遇措置などをうまく活用することで初期投資を抑えることができます。また、情報を効率的に集め、最新の技術や事例を把握することも大切です。

 

参考文献

  • 中村恵二 『図解入門業界研究 最新農業の動向としくみがよ~くわかる本』(秀和システム、2023年)
  • 三輪泰史『図解よくわかるスマート農業-デジタル化が実現する儲かる農業』(日刊工業新聞社、2020年)

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