多くの直売所では、農産物を作って持ち込む生産者が価格を決めることができます。販売の手数料などが発生する場合もありますが、卸値ではなく小売価格をベースに設定できるので、卸売市場へ出荷するよりも利益をとることができます。卸売市場で価格が下落したときのリスクヘッジとしても役立ちます。
そこで本記事では、直売所の売上を伸ばすためのポイントをいくつかご紹介していきます。
売上を伸ばすためのポイント
まず心がけたいのは「客単価をあげる」ことです。少子高齢化が進み、直売所に足を運ぶ客数を増やすことは簡単なことではありません。そこで直売所の売上を伸ばすためには、客単価をあげるための売り場作りが重要になってきます。
客に届く陳列を心がける
持ち込んだ商品をただ陳列するだけでは売上を伸ばすことにつながりません。来店客の目に商品が届かなければ、売れることも、そもそも手に取ってもらうことすら叶いません。
消費者の目に届かせるためには、インパクトのあるPOP広告※をつけたり、陳列棚に角度をつけて商品を見えやすくしたり、陳列数を増やしたりすることが有効です。
※販売店などの内外に展開される広告やディスプレー類の総称。point of purchase広告の略。(出典元:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))
なお、直売所に設置するPOP広告は、市販されている定型文のものやパソコンで印刷したものよりも手書きの方が有効とされています。
商品特徴や下ごしらえの方法、レシピなどの情報を合わせて提供する
来店する消費者は野菜や果物に詳しい人ばかりではありません。商品を手に取ってもらうために有効なのは、品種の情報や食べ方、下ごしらえの方法やレシピなどの情報を合わせて提供することです。
品種が多い商品の場合は、消費者が選びやすいよう品種ごとの特徴を提供します。品種の違いに興味が出た消費者の中には、食べ比べをするために異なる品種を購入してくれるかもしれません。
近年、スーパーマーケットでは1次加工された農産加工品が多く出回っており、若い世代の人の中にはアク抜きの方法を知らない人もいます。下ごしらえが必要な商品には、その方法や食べ方などの情報を合わせて提供することで、その商品を購入するハードルを低くすることができます。
直売所に来る客層に合わせて商品の容量を変える
直売所に来る客層によって、商品の一袋あたりの容量を変えるのも効果的です。たとえば週末にまとめ買いをする来店客の多い直売所であれば、まとめ買いのニーズがあるので、日持ちする商品を大容量で販売することが可能といえます。
一方、少量販売のニーズが高い直売所では上記のアプローチはあまり効果的ではありません。大きな野菜は2分の1、4分の1にカットして販売したり、大容量ではなくバラで販売したりするなど、客層を観察して対応していきましょう。
機会ロスを避ける
機会ロスとは「商品があれば売れていたのに、商品が欠品または不足したために販売する機会を損失し、本来得られた利益を逃すこと」を指します(出典元:機会損失(機会ロス):日経クロストレンド)。
直売所に持ち込んだ商品が売り切れることは好ましいことですが、それ以上売ることはできません。もし、自分の持ち込んだ商品が早い時間帯に売り切れている場合には、どのようなタイミングで売り切れるのかを確認し、持ち込む量を増やしたり、納品頻度を高めることで機会ロスを避けることができます。
どんな商品が直売所で売れている!?
最後に、直売所の売れ筋上位品目をご紹介します。一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構は、全国の農林水産物直売所で常設・通年営業を行っている店舗にアンケートを実施。各店舗の「売れ筋ベスト3」を集計した結果を紹介しています。
回答には「野菜」や「果物」「鮮魚」などの総称も含まれていますが、1位にトマト、3位にきゅうりがランクインしています。上位20品目のうち半数は野菜となっています。
<順位、品目、回答店数>
- トマト 272
- 野菜 219
- きゅうり 155
- 米 87
- いちご 81
- 切り花 75
- なす 70
- 果物 68
- みかん 57
- りんご、ねぎ 各54
- ほうれんそう 53
- キャベツ 52
- ぶどう 50
- しいたけ 48
- トウモロコシ 43
- なし 41
- 山菜 35
- だいこん・卵 各32
- 鮮魚 31
- たまねぎ 30
引用元:農産物直売所の運営改善点を探るためのチェック項目の選定
直売所で、売れ筋上位品目を販売してみませんか?
参考文献
折笠俊輔『農家の未来はマーケティング思考にある EC・直売・輸出 売れるしくみの作り方』(イカロス出版、2021年)