日本の農業は、農業従事者の高齢化に伴う後継者不足や耕作放棄地の増加、低い食料自給率などさまざまな問題を抱えています。若い農業従事者は増加傾向にあると言われていますが、それでも農業人口は減少傾向にあります。
世界に比べて人口が多く、農地面積の小さい日本。そんな日本が世界と競争するために取り入れたい成功事例を紹介していきます。
アメリカの場合
大農法
農地面積の規模が違うため、全てを真似ることはできませんが、アメリカの大農法から学べることはいくつかあります。農業大国アメリカでは、広い農地面積を大型機械で管理しています。少ない人手で多くの農作物を生産することができるので、効率良い生産が可能となります。生産コストを低くできるのも大農法の特徴です。
日本では農地面積規模をそのまま真似することはできませんが、規模拡大を目指す次世代の担い手に向けて、また農地の維持保全を図るために「農地の集積・集約」が推進されています。農地面積が集約化されれば、より効率良い農業生産が可能になるのではないでしょうか。
スマート農業
農業大国アメリカでは「AgTech(アグテック)」と呼ばれるスマート農業が進められています。代表的なものとしてドローン活用が挙げられています。農地に適切な量の農薬を散布するために活用される他、上空から生育状況や土壌の状態等のデータを収集し、農地を分析するためにも活用されています。
アメリカのベンチャー企業FamLogs社は、土壌状態に合わせた作付け量や肥料の量などをアドバイスするサービスを提供しています。衛星画像から集めた農作物や土壌の状態と蓄積したデータを照らし合わせ分析することで、このサービスを可能にしています。
自動運転トラクターや自動間引きロボットの導入、都市部への植物工場の建設など、従来の農業とは違う新しい農業の形は、日本も積極的に取り入れていきたい成功事例と言えるでしょう。
オランダの場合
農業大国アメリカのスマート農業を紹介しましたが、スマート農業を語るなら外せないのがオランダの事例です。オランダの国土は九州とほぼ同じ大きさで、農地面積は約184万haです。日本の農地面積が約450万haと比較すると規模は小さいのですが、農産物の生産額は世界第2位を誇っています。
オランダは一般農家の約8割がスマート農業を駆使しているといわれています。自動制御システムで肥料や水の量を制御したり、温度や湿度、二酸化炭素濃度を管理するセンサーを活用したりして、農作物を育てています、
1980年代、EU(欧州連合)の前身である欧州諸共同体(EC)加盟国だったオランダ。ECが貿易の自由化を進めたことにより、EC加盟国から安い農作物が輸入されるようになりました。国内農業が弱まることを危惧したオランダは、国家をあげて国内農業の転換を図ります。農地面積が決して広くない、冬には農作物が育ちにくい風土であるオランダで、スマート農業は、生産効率の向上と高い付加価値を生み出すことのできる農業だったのです。
日本が世界の成功事例を参考にするための注意点
アメリカとオランダの事例を紹介しましたが、そのまま成功事例を真似するのはNGです。アメリカやオランダに限らず、世界各国と日本を比較すると、農地面積や食文化、関税・通貨等に違いがあります。独自の文化や仕組みがあるため、そのまま真似ても同じ成果が期待できるとは限りません。
ただ、アメリカとオランダの事例で紹介した
- 効率的な生産
- 高付加価値のある農作物
は積極的に取り入れる価値があるのではないでしょうか。
日本の農業従事者の数は減少傾向にありますから、スマート農業などを駆使した効率的な生産方法は積極的に取り入れることで、労働力不足を補うことができるでしょう。農地面積が広いわけではないので、アメリカのような大農法は難しいかもしれませんが、日本政府が推進する農地の集積・集約化によって、次世代の担い手が効率よく農作物を大量生産するかもしれません、また世界に”日本ブランド”の農作物を輸出するのであれば、品質や安全性など、日本らしさを追求した付加価値を加えて売り出すことも重要と言えます。
参考文献