昨今、農作物のブランド化が推進されています。ブランド化とは、他の商品と差別化することを意図した名称やデザイン等のことを指します。ブランド化を行うことで、競争力の強化が期待できます。農作物は元々、自然条件に左右される規格化しにくい生産物でしたが、時代の流れとともに品質が規格化され、大量生産されるブランド品も登場してきました。近年「6次産業(農業や水産業などの第1次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態)」が推進されていることから、小規模農家の間でも農作物のブランド化が注目されています。
農作物ブランド化の方法
農作物をブランド化させるためには、ただ農作物を生産するだけではいけません。農作物ではなく「商品」として捉えることが重要だと言えます。例えば、今まで生産することだけを考えていたのであれば、消費者側に立って「なぜこの農作物は売れて、この農作物は売れないのか」を理解する必要があります。自分がつくった農作物が、最終的にどのように消費されるかを想像しながら、ブランド化を進める必要があります。
そこで重要なのは「ターゲット顧客」を明確化することです。どのような消費者に対して、どのような価値を提供するかを考えながらブランド化を進めていきます。
農作物ブランド化を進める具体的な流れを簡潔にまとめると以下のようになります。
- プロジェクトを立ち上げる
- 戦略を決める
- 商品開発
- 販路開拓
「プロジェクト立ち上げ」の際、自分の農作物の長所・短所を知ったり、競争相手やターゲット顧客について考えます。もし加工、流通業者と組んでブランド化を進めるのであれば、一緒に取り組んでくれる相手を探すのもこのタイミングです。
「戦略を決める」では、ブランド化を進めるうえで活用できそうな商品を絞り込みます。近年では「クラウドファンディング」という不特定多数の人から財源を募る方法が浸透しているのですが、それを利用してテストマーケティングを行うのも手です。資金集めの返礼品にブランド化を進める予定の農作物を用意し、顧客の反応を見ることができます。
「商品開発」では、商品を具体化し、適切な価格設定を行うだけでなく、販売にあたり必要な食品表示や品質管理基準の作成など、必須事項を固めていきます。
最後に営業体制を整え、販売を開始します。農作物ブランドの売れ行き次第で販路を拡大したり、海外に目を向けてみたりと視野が広がっていくはずです。ブランド化を進めるのは簡単ではありませんが、しっかりと組み立てていくことで、ただ生産するだけでない楽しみを味わえるとも言えます。
なお農作物のブランド化をサポートしてくれる企業も存在します。株式会社MISO SOUPは、「農作物ブランド化」や「6次産業化」を考える農業従事者のために、事業企画やマーケティングコンサルを行なっている会社です。ブランド化をサポートしてくれる企業は今後も増えていくことでしょう。信頼できる企業の手を借りて、ブランド化を進めるのもおすすめですよ。
農作物ブランド化の成功事例・成功ポイント
最後に、農作物ブランド化の成功事例を紹介します。
レンコン農家の「野口農園」は、レンコン『あじよし』というブランドで知られています。自社レンコンのブランド化することになった野口農園は、商品パッケージやチラシなどを刷新し、また食べたことのない人に向けてキャッチコピーにもこだわりました。「大正15年からレンコン栽培」という実家の歴史・伝統を全面にだし、化粧箱に入れたギフト用レンコンとして1本5000円で販売しました。最初の3年間はなかなか売れなかったようですが、4年目に、あるスーパーマーケットが取引を依頼してきたことから変化が訪れました。
「野口農園」のレンコンは高級品ですが、農作物生産へのこだわりと、伝統を引き出し、長い時間をかけてじっくりとブランド化を進めたからこそ、最高級レンコンとして名を馳せるブランド品になったと言えます。
『あじよし』からわかる、農作物ブランド化の成功ポイントは3つあります。
- 農作物の魅力を引き出す
- 顧客視点で考える
- 販路を狭めない
『あじよし』は「大正15年からレンコン栽培」という伝統がありました。先代がこだわった品種の選抜と栽培を魅力として引き出し、消費者に伝わりにくいこだわりを伝わるように発信したことが成功ポイントと言えます。
また消費者が『あじよし』を美味しく楽しめるようにレシピ開発にも力を入れています。
『あじよし』は国内食品卸会社だけでなく、海外にも目を向けて生産・販売を行なっています。ニューヨークの高級和食レストランにも『あじよし』は届けられていると言います。品質がよく、顧客に愛されれば、世界でも認められるのです。
参考文献