昨今、新規就農者の数がじわじわと増えていると聞きます。
農業を始めたいと考える人が増えるということは、農業者人口が減少しつつある今、とてもありがたいことです。そんな新規就農者が抱える悩みや不安のひとつに「就農にかかる初期費用」が挙げられます。一体どのくらいのお金が必要になるのでしょうか。
本記事では就農にかかる初期費用について紹介していきます。
就農にかかる初期費用
就農にかかる初期費用ですが、自己資金額は平均およそ500万円~600万円だと言われています。全国新規就農相談センターが行なった「2016年度新規就農者の就農実態調査」によると、土地取得代を除いた額は平均569万円となりました。
就農1年目、設備投資などに費やした金額が411万円、生活費に159万円という結果です。
就農する際必要になってくるものは、何をどうやって育てるかにもよりますが、
・農地
・種苗
・肥料代
・農業機械代
・水道光熱費
など、あげるとキリがありません。
加えて就農したばかりは「収穫まで無収入」「収穫しても売り物にならない」など、なかなか現金化につながらないケースも多いです。そのような事態も踏まえ、自己資金を約500万円~600万円蓄えておくことが重要だと言えます。
もちろん近年では、副業・複業という働き方もありますから、収穫までの無収入期間に他のなりわいで生計を立てるという選択肢もあります。が、いずれにせよ「備えあれば憂いなし」です。算出された自己資金額は手元にあったほうが安心ですね。
初期費用を抑えたいなら
初期費用の中で、最も費用が必要になるのは
・農業機械
・農業施設
なのではないでしょうか。
これらの取得費用の平均は約400万円です。農業への取り組み方によっては大幅にカットできるかもしれませんが、これらを必要とする農業を始める場合、初期費用の大半をこれらが占めることになります。後述しますが、設備費のために「自治体の助成制度」を活用するのも初期費用を抑えるためのアイデアです。使える制度は存分に使いましょう。
農業を始めるのであれば、集中すべきところは「費用をどうするか」ではなく「農産物を生産すること」ですよね。農業を始める地域の助成制度など、あらかじめチェックしておきましょう。また農業機械は必須ではありません。小さな農地なら手作業も可能です。
それから育てる作物でも初期費用の削減は可能です。作目にこだわりがないのであれば、比較的育てやすい、安価で丈夫な作物から始めるのも手です。
資金調達に使える助成金
初期費用にかかるお金を自己資金だけでまかなう人もいるかと思いますが、資金調達に利用できる助成金制度も数多く存在します。自治体の補助制度、給付金などを活用して、資金面の悩みを解消しましょう。代表的な助成金には、
・就農支援基金
・農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)
などが挙げられます。
若い世代の就農者におすすめなのは、国の補助金制度である「農業次世代投資資金」です。農業研修期間中は最長2年間で、準備型資金150万円/年を交付してもらうことができます。年150万円は大きいですよね!また研修終了後は経営開始型資金として同額の補助金を最長で5年間交付してもらうことができます。ただし、わかっているとか思いますが、誰でも借りられるわけではありません。
・45歳未満
・研修後、1年以内の就農
・最低5年間の農業継続
などの条件があります。助成金制度は厳しい条件や申請方法がつきものです。事前に調べ、自分に合った制度を利用しましょう。場合によっては「返還義務」が生じることもあるので、事前計画はとても重要です。
資金を活用するために、経営シミュレーションをしよう
自己資金を集めるにも、助成金を活用するにも、無計画に事を進めることはできません。必ず経営シミュレーションを行い、どのくらいの費用がかかりそうか事前に知っておく必要があります。農業は、
・農業の技術
・農地など必要設備の確保
・資金の確保
・生活の確保
をしなければ成り立ちません。農業は生業です。暮らすためにはお金が必要です。お金の話を抜きにして農業を続けることはできません。
「全国新規就農相談センター 経営シミュレーション」では、栽培を考えている作目を考えると、その作目での経営をシミュレーションしてくれます。
・農業経営のために必要な金額
・生活に必要な金額
・1年目の売上額がシミュレーションされるので、参考になります。
クラウドファンディングを利用した資金調達
近年、資金調達方法のひとつとして「クラウドファンディング」が有名です。インターネット上で、不特定多数の人からお金を調達する手法です。出資してもらう最低資金額は、クラウドファンディングサイトの設定によってさまざまですが、数千円から出資できます。出資者も気負わずにお金が出せるというのは画期的ですよね。一般的には出資者に「リターン」と呼ばれるものを返します。リターンは商品やサービスなどが多いです。
株というより、商品購入時に前払いしてもらうイメージですね。「寄付型クラウドファンディング」と呼ばれるリターンなしのものもありますが、農業クラウドファンディングではおすすめしません。おすすめしないというより、せっかくだから生産した農産物を出資者に食べてもらったほうが、宣伝にもなり、リアルな反応が返ってくるので、その後の経営の参考になります。
農業を始める人にとって、初期費用は共通した悩みかもしれませんが、現代はさまざまな資金調達方法、農業のやり方があります。自分に合った方法を探し出し、就農を始めてくださいね。