昨今、農産物直売所が注目を集めています。
直売所の商品といえば、かつては「安さ」が重視されていました(もちろん現在でも、消費者から「スーパーよりも手頃な価格で買える場所」として認知されていると思いますが)。
しかし近年では、それに加えて「地域の食材が手に入る場所」「そこでしか買えないものがある場所」などの付加価値がつき、生産者の工夫次第では、高い利益を得られる場所に変化しつつあります。
そこで本記事では、直売所に関心の高い人に向けて、さまざまな形に分類される農産物直売所について解説していきます。
農産物直売所の分類
農産物直売所は
- 個人直売所
- グループや企業が運営する直売所
の大きく2種類に分けることができます。
個人直売所は、個人の生産者が運営する直売所です。圃場の前や自宅敷地内などのスペースを使って始めることができ、有人販売ではなく無人販売で生産物を販売することもできます。
グループや企業が運営する直売所は、分類分けすると以下のようになります。
<地産地消型>
地元の農産物を地元の人に提供するタイプの直売所です。農家が自主的にグループを作って運営します。
<組織運営型>
JAの直売所など、運営元が企業や生産者グループの直売所です。
<マルシェ型>
都市などでよく見かけるマルシェなどが該当し、生産者と直売所の場所が離れているのが特徴です。
<インショップ型>
スーパーマーケットなどの一画で、個人生産者の農産物を販売するタイプです。
<観光地型>
サービスエリア内にある直売所や道の駅などを指し、農産物だけでなく加工品や地域の土産品なども主力商品化となっています。
分類別のメリット・デメリット
個人直売所の場合、自宅敷地内で農産物をそのまま販売する分には、許可や届出が必要ないため、直売を始めやすいのがメリットです。
無人販売機などを利用すれば、販売時期や時間を気にする必要もありません。
ただし、安全性や衛生面、無人直売所の場合に考えられる盗難被害など、あらゆる面を自分で管理しなければなりません。
グループや企業が運営する直売所のメリット・デメリットを簡潔にまとめると以下のようになります。
<地産地消型>
- メリット:出荷にかかる経費が最小限で済む(地産地消の特徴)
- デメリット:商圏は限られてしまう
<組織運営型>
- メリット:販売機会を広げられる
- デメリット:販売機会が広げられる分、出荷する人が多いため、競合が生まれる
<マルシェ型>
- メリット:消費者が多く、需要の安定が見込める
- デメリット:生産者と直売所の距離が離れているため、物流経費がかかり、出品するための費用が高い場合も
<インショップ型>
- メリット:スーパーに訪れる消費者の目に入るため、多くの消費者に手に取ってもらえる可能性あり
- デメリット:普通の直売所より手数料がかかることがある
<観光地型>
- メリット:観光需要で売れる
- デメリット:観光客が主力の消費者のため、常連客がつきにくい
またグループや企業が運営する直売所で販売する場合、小売店と違って全量買い取ってもらえない場合があることに注意しなければなりません。
売れ残りを引き取る必要性が生じる可能性もあるため、ただ収穫したものを直売所に置くのではなく、商品を確実に売るための工夫も必要なのです。
直売所で販売するコツ、売れるコツ
どの形態の農産物直売所にも共通する販売のコツを紹介していきます。
鮮度・品質・価格を意識しよう
小売店では
- 品揃え
- 鮮度管理
- クレンリネス(清潔)
- サービス
の4点が求められます。
直売所も同様ですが、特に重視すべきなのは「鮮度管理」です。直売所にやってくる消費者の8割が「品質が高く、鮮度のいい」野菜を求めていると言われています。
その上で考えなければならないのが「価格」。直売所では生産者に価格形成権があります。消費者が求める品質を維持しつつ、生産原価に適正な利益を加えた価格設定を心がけましょう。
他の生産者の価格設定や小売店の価格設定、消費者の動きなどを分析し、「値ごろ」な価格を設定しましょう。
「安全・安心」に油断禁物
生産履歴の提出は手間がかかると感じるかもしれませんが、消費者の「安全・安心」志向に応えることを怠ってはいけません。
「新鮮」で「安全・安心」な野菜であるだけで、消費者から十分高い評価を得ることができます。
自分の望む販売形態を選ぼう
さまざまな直売所の分類がありますが、どこが自分に適しているかどうかは、自分がどんな販売形態を望むか次第です。
高い利益を求めるのか、コストがかからないことが第一なのか、商品を全量買い取ってもらうことを望むのか、全て自分の裁量で決めたいのか…
販売形態の事例として「JA紀の里ファーマーズマーケット めっけもん広場」の「量販店の買取」事例を紹介します。
ここでは、農業者の売れ残りをカバーするために「量販店の買取」を行っています。
生産者はあらかじめ出荷日や品目などを量販店へ提案。提案が通ったら、提案した内容を守り、通常の直売所への出荷同様、集荷場へと持ち込みます。
直売所の委託販売手数料と同じ、15.5%+ラベル代1円が徴収されるため、生産者の取り分は少なくなりますが、買取のため売れ残りの心配はなくなります。
実際にこの制度を利用している農家は、「天候によって左右される直売所の客足を考えると、買取は安定的でありがたい」とのこと。
もしこの事例を読んで、委託販売手数料の金額等が気になる場合には、個人や手数料の価格が低い直売所を選んだほうがよいでしょう。
盗難対策をしよう
個人直売所で無人販売を考えている人は「盗難対策」を必ず考えましょう。
効果的なのは監視カメラの設置です。フェイクの監視カメラでも、盗難被害を減らす効果がありますよ。
また集金ボックスを丸ごと盗もうとする人もいると聞きます。お金を入れる箱が持ち去られないようにしっかりと固定する、お金を簡単に取られないような箱を用意することも大切です。
参考文献
- Eat Local時代。さあ、直売所の出番が来た!【直売所プロフェッショナル#01】 マイナビ農業
- 農業マーケティングの今~新しい流通ルートで儲かる農業へ~ ジブン農業
- 渡邉絵里子編集, 『農業ビジネスマガジン 2018 SPRING vol.21』, 2018年5月25日, イカロス出版
- 畑で無人で売ってる野菜は盗まれないの? 仕組みを農家の人に聞いてみた! 進路のミカタ