震災や台風、集中豪雨など、自然災害の脅威を立て続けに感じる昨今。本記事では、自然災害や有害動植物の発生などで考えられる農業へのリスクとその対処法についてまとめました。
ただし、主に震災や台風などの自然災害に対して言えることですが、優先すべきは何よりも「人命」です。考えられるリスクによって経営が悪化し、生活が圧迫されるケースもないとは言えませんが、まずは「人命第一」ということを忘れないようにしてください。
災害で起こりうるリスクと対処法
<震災で起こりうるリスク>
・地震によって土地そのものが影響を受け、畑や田んぼが壊滅する
・農作物が収穫できないことによる収入面への影響
・地震によって農業従事者の住居にも影響が及ぶ
→移住せざる得ない状況に陥ったり、自宅の修繕で費用がかかるなど
<対処法>
地震は簡単に予測することができない自然災害です。そのため、対処法として挙げられるのは「迅速な行動」です。
《被害にあったら》
・農地や施設への被害、水利機能などの被害状況を早期に把握する
・他の農業者へ情報を伝える
・農業資材が確保できるか確認する
・今後の営農における農業資材の代替品の確保・活用や農作業計画の見直しなどを行う
《農作物に対して》
・被害状況に応じて、作付計画を柔軟に変更する
・出荷時期の農作物においては、集出荷施設の稼働状況を確認し、計画通りの収穫ができるように栽培管理を徹底する
異常気象で起こりうるリスクと対処法
<大雨・台風による被害>
大雨によって農作物が冠水したり農業用施設が損壊したりする可能性がある。
<大雪・低温による被害>
施設栽培が多い地域での積雪は、ビニールハウス等の損壊や農作物が損傷する可能性あり。また降霜を伴う低温によって、果樹等が凍霜害を受ける可能性がある。
<対処法>
被害規模までは予測できないとはいえ、地震と比較すると予測しやすいため、
・気象情報の有効活用
・各種天候保険の活用
などが対処法として挙げられます。
《事前対策》
・冠水が予想される場合には、事前に圃場周辺の点検や排水路の清掃を行う
・浸水被害が予想される場合には、収穫物を浸水しない場所に移動する
・強風に備え、農業用施設の取り付け金具や抑えひもなどを補強する
・飛来物による損傷防止に、防風対策を行う(防風網の設置など)
・塩害が予想される場合には、除塩のための水源を確保する
《事後対策》
・冠水した場合には、速やかに排水を行う
・農業用施設や機会が冠水した場合には、漏電やショートに注意しながら機器の始動、通電再開を行うこと(状態が悪い場合には、メーカーなどに依頼し自分一人での作業を避ける)
・台風通過後の高温に注意し、高温障害が生じないよう適切な湿温度管理を行う
・塩害が生じそうな場合には、速やかに散水し除塩する
有害動植物で起こりうるリスクと対処法
<害獣>
・農作物の食害
・食害被害による営農意欲の減退
・食害被害による耕作放棄・離農の増加
<雑草>
・農作物に必要な太陽光、水分、養分を奪う
・雑草が勢力を拡大し、農作物が弱ることによる病害虫被害の拡大
<対処法>
害獣においても雑草においても、圃場周辺の環境を整えることが重要といえます。また被害を受けた場合には、加害個体の駆除や除草を徹底することが大切です。
・被害に遭わないために、ネットや柵で農作物を囲う(外部との接点を減らす)
・耕作放棄地や藪などをなくす
→雑草の勢力拡大を抑える・害獣の隠れ場所をなくす
・害獣が近づかないよう、収穫残渣や放任果樹など「エサ場」となる場所をなくす
病害虫で起こりうるリスクと対処法
<病害虫によるリスク>
・生育不良
・枯死
・品質低下
<対処法>
病害虫は、主に「物理的防除」「化学的防除」「生物的防除」の方法で対処することが挙げられます。
・害虫被害に遭わないために農作物をネットで囲う(物理学的防除)
・農薬を撒いて予防する(化学的防除)
・益虫を利用し害虫から農作物を守る(生物的防除)
などが挙げられます。先で紹介した震災や自然災害と比較すると、ある程度データが揃っているので、農作物に関連する病害虫や病害虫そのものについてよく学ぶことで、農作物が被害に遭う前に対策を練ることができます。
また近年では「耕種的防除」と呼ばれる防除法もあります。これは病害虫に対して耐性をもった品種を選ぶことで、病害虫被害に遭うリスクを抑える方法です。