日本の農業における課題として農業従事者の高齢化が挙げられます。担い手の高齢化が進行しており、就業人口は減少しつつあります。そんな日本は「農業の経営規模が小さいが、農業機械(以下、農機)の保有台数が多い」という特徴があります。経営規模が大きい農場や生産効率のいい農業生産には欠かせない農機。しかしその農機の整備不良が問題視されています。
高齢農家の使用する農業機械に整備不良が多数
日本農業機械化協会の調査によると、高齢のベテラン農家が使用する農機にタイヤの摩耗や部品の故障などの整備不良が見られています。また同協会の調べによると、死亡事故の多いトラクターを利用している農家の6割近くが定期点検を実施していなかったと言われています。
調査対象となった農機のタイヤ摩耗に関しては、その24%に不具合があったことが示されています。農繁期には暗くなってからも作業を行う農家も少なくないでしょう。そんな中、調査した全体の14%がヘッドランプが点灯しませんでした。なお農機のスピードが低速とはいえ、公道を走る機会もあるかもしれません。シートベルトは着用すべきでしょう。しかしこの調査によると、シートベルトを着用していない人は調査対象の86%だったと言います。
農機による死亡事故は決して少ないとは言い切れません。ですが、整備不良や不具合をそのままにしていたり、自分の身の安全を守るための行動が取れていないことなどが明らかとなりました。
農業機械を長く使う際のコツ&注意点
農業機械の寿命を知っておこう
日本農業機械化協会が行った調査で分かった事態を回避するためには、長く使い続けるためにも農機の寿命をあらかじめ理解しておくことが大切です。
以下に、農機の耐用年数、耐用時間、耐用年数に相当する平均使用時間を紹介します。
ただし、これはあくまでもそれぞれの農機の平均的な値ですし、使い方は使用頻度は人によって異なります。あくまで目安として考え、この寿命が近づいてきたあたりから、買い替えや破損や故障しているパーツの交換などを考えるようにしましょう。
農業機械の種類 | 耐用年数 | 耐用時間 | 耐用年数に相当する平均使用時間 |
トラクタ | 6〜10年 | 1200〜5000時間 | 200〜500時間 |
耕運整地用 | 6〜15年 | 900〜2000時間 | 100〜250時間 |
代 か き 用 | 6年 | 1,200時間 | 200時間 |
施肥播種用 | 10年 | 1000〜1500時間 | 100〜150時間 |
鎮 圧 用 | 15年 | 1,500時間 | 100時間 |
田 植 用 | 6年 | 1200時間 | 200時間 |
防 除 用 | 8年 | 400〜800時間 | 50〜100時間 |
収 穫 調 整 用 | 8〜10年 | 500〜3200時間 | 50〜400時間 |
運 搬 用 | 5〜12年 | 1600〜2400時間 | 200〜400時間 |
農機を動かす前に機械の点検を
協会の調べで定期点検不足が明らかとなっています。しかし定期的に点検を行い、「農機を動かす前にはまず点検」という習慣をつくることが、機械の性能を発揮させ、長持ちさせ、維持費を節約するコツと言えます。
コンバインや草刈り機・チェーンソーなど、使用前には必ず動作確認を行いましょう。なお使用前だけではなく、使用後の農機の状態も重要です。使用後は必ず清掃し、油をさしておくことが長持ちさせるコツです。田植え機などの農機も使用後は必ず洗車し、清潔を保ちます。
オイル交換は怠らない
農機の種類やどのくらいの頻度で農機を使用するかにもよりますが、こまめなオイル交換によって動作不良を回避できたり、エンジン寿命を伸ばすことができます。150時間に1回はオイル交換することが推奨されています。もしオイル交換や定期点検を怠ると、汚れたオイルが原因でオイルの循環が悪くなり、エンジンの部品が熱くなり動かなくなる「エンジンの焼き付け」が起こることも十分考えられます。農機が動かなくなってしまっては仕事にならないですよね。農機を活用する以上、定期点検は必要不可欠なのです。また定期点検のみならず、使用している農機にちょっとでも不安な点があれば点検を行い、場合によっては修理に出しましょう。
こまめな清掃を
先でも紹介しましたが、農機を長持ちさせるコツは使用前だけの行動だけではありません。農機を使用した後にはこまめに清掃を行いましょう。埃や泥、使用した農薬等がついたままにはせず、使用後にはそれらをしっかり取り除きましょう。埃っぽい季節には、1日1回は埃をはたくような清掃をしたいところです。
農機を新しく購入するときにもポイントが
協会が調査したような結果は、農業従事者にとっても痛手となる問題です。農機が壊れてしまっては生産が滞ってしまいます。そこで農機を新しく購入、利用するところから、整備不良を起こさないような取り組みを心がけましょう。
農機を購入する際、農機本体の価格や性能も重要ですが「アフターサービスが優れているかどうか」にも注目してみましょう。アフターサービスがしっかりしていれば、農機のメンテナンスを適切に行うことができると言えるでしょう。万が一予期せぬトラブルで農機が故障しても、迅速に修理してくれるサービスがあれば、農作業にも影響が及びにくくなりますし、農業機械の長寿命化にも役に立ちます。
参考文献