2023年6月18日に公開された日本農業新聞の記事によると、クボタやヤンマー、井関農機や三菱マヒンドラ農機といった農機メーカー各社が2023年度、トラクターや田植え機などの値上げを発表しています。原材料価格や物流経費、電気代などのエネルギー価格の高騰が要因とされています。値上げ幅はいずれも5%ほど。
そこで本記事では、農業機械が値上がりする中、農業機械にかかるコストを抑えるアイデアを紹介していきます。
農業機械コストを抑えるアイデア
定期的な保守点検
定期的な保守点検を行うことで農業機械を長く使い続けることができます。
農業情報誌『現代農業 2022年11月号』(農文協、2022年)に掲載されていた記事には、整備士の方に農業機械の修理や定期点検、エンジンオイルの交換などでお世話になる際、自分でもメンテナンスができるよう、整備士の方が行う作業をよく観察することが推奨されています。全ての作業を整備士の方と同じようにこなす必要はないと思いますが、疑問点があれば整備士の方に質問して、整備のコツを聞き出すことで、農業機械を長持ちさせる使い方ができるようになるといえます。
また、農業機械を格納する場所も重要です。同記事の圃場は小笠原にあり、亜熱帯で台風常襲地帯のため、紫外線や潮風の影響が大きく、屋外に置いておくと、わずかな期間でもプラスチックやゴムの部品が劣化してしまう、と記されていました。
劣化や故障を防ぐためにも、こまめな定期点検、そして農業機械を劣化や故障の原因となる環境から守れる保管場所の用意を怠らないようにしましょう。
低価格帯や中古品の活用
低価格機械の導入や中古農機の活用も、農業機械コストを抑えるアイデアのひとつといえます。
近年は低価格帯の農業機械が販売されています。たとえば全農では、農業機械の低コスト化を実現するため、定期的に共同購入トラクターの受発注を実施しています。従来の機種に比べて1割程度安価な農業機械を販売しています。
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農業機械は丁寧に扱い、定期点検等を実施することで長く使うことができるため、比較的状態の良い中古農機を購入することも、初期投資を抑えることにつながります。
加えて、シェアリングサービスの活用もコストを抑えることに役立ちます。
農機メーカーのクボタは、農機を購入する費用の確保がハードルとなっている新規就農者をメインターゲットとした農機シェアリングサービスを展開しています。
このサービスは、協力農家(保管ユーザー)が保管・管理するクボタの農機を、複数の農家(一般ユーザー)とシェア利用する、というものです。このサービスは1時間単位で24時間、使いたい時だけ利用することができ、定期メンテナンスや利用中のトラブル対応は、クボタの販売会社が担当するため、一般ユーザーは農機を購入することなく安心して農機を利用できます。
また農林水産省でも農業機械のシェアリングを行う実証実験が行われました。岡山県で行われた実証実験では、近隣で農機のシェアリングを行うと作業時期が競合することから、南北約100km、標高差約500mの広域で田植え機とコンバインのシェアリングを行い、作業時期が競合するのを避けながら、機械の稼働率を向上させ、導入コストを低減させる取り組みが行われました。
結論、天候によってスケジュール通りに作業が進まない場合には複数台機械を準備する必要があったり、共同使用における弊害(保有機械ではないことから荒っぽく使う利用者への懸念や破損などに気を遣うことなど)がデメリットとしてあげられていますが、シェアリングを行うことで高価な機械を購入しなくても利用が可能になること、岡山県では北部と南部で農機の使用時期が1ヶ月近く違うことから効果的に活用できるというメリットが報告されています。
免税軽油を利用する
農業機械の燃料として利用される軽油には、軽油引取税が課せられています。
軽油引取税は道路整備のための財源として1956年に創設されました。軽油の代金には1リットルにつき32.1円の都道府県税(軽油引取税)がかかっています。
トラクタや田植え機など農業で使用する機械など、主に道路以外の場所で稼働する機械への軽油の利用は、課税免除の対象となっています。
免税対象となる農業用の軽油は以下の通りです。
農業を営む方(農作業のうち基幹的な作業(専ら機械を使用して行われるもの)のすべての委託を受けて農作業を行う方を含む)が使用する耕うん整地用機械、栽培管理用機械、収穫調整用機械、植物繊維用機械及び畜産用機械の動力源に使用する軽油
引用元:農業に使用する軽油引取税の免税
免税手続きの手順は以下の通りです。
- 都道府県税事務所に問い合わせ、申請書類一式を取り寄せる
- 必要事項(耕作面積、年間の見込み所用数量、該当する機械の種類や型式、製造番号など)を記入し、「免税軽油使用者証」及び「免税証」の交付を受ける
- 軽油を購入する際は「免税証」を軽油販売業者に提出、免税軽油を購入・使用する
- 毎月末までに使用及び購入した数量等を報告する
免税軽油を利用するハードルは、申請手続きと細かい報告書を提出する面倒さといえます。
地域によっては、この面倒な申請手続きや報告書の提出を代行する「免税軽油代行サービス」を実施しているところもあります。
たとえば2021年2月時点の情報ではありますが、福岡県田川市に本所を置く農業協同組合JAたがわでは、軽油免税に係る手続き代わりに行う制度(代行制度)を実施していました。
免税軽油の利用を考えている人で、地域に代行制度がある場合には活用してみてはいかがでしょうか。
参考文献