7月中旬、関寿雄さんを小山市の自宅に訪ねた。関さんは農家の4代目で地元の宇都宮大学を卒業し、土木会社に就職した後、30歳で就農した。この地域は、昔からのコメとビール麦の2毛作地帯で、早い時期に30a区画の基盤整備が実施され、現在も、かなりの面積にビール麦が栽培されている。
関さんはコメとイチゴを栽培している。コメは主食米250aと飼料米170a、作付品種は、短稈で倒れにくい多収量品種のアサヒノユメが主である。自家消費用にはコシヒカリを70aほど生産している。
年間の作業体型は、4月6日に種まき、5月1日に田植え、5月6日から23日にかけて2回目の田植え用の育苗、田植え、9月5日から10日にコシヒカリ収穫、アサヒノユメは9月20日から10月5日にかけて収穫する。
イチゴは水はけのよい水田圃場で22.5aのハウスで栽培している。イチゴ経営を始めた頃、壬生の30aから40aの家族経営のMさんと、外国人を20人雇い100aやっている大規模イチゴ経営を視察した。
大規模イチゴ経営にチャレンジするためには、栽培技術だけではなく労務管理などの企業的な経営手法が必要不可欠だ、関さんは、大学卒業後、道路監督の責任者をやっていたから、労務管理などの企業的な経営手法には問題はなかった。しかし、金儲けを優先的に考える大規模イチゴ経営より、技術者としてイチゴに携わりたいと考え、農業をやりながら人生を楽しむことが出来そうなMさんの家族経営を選択した。
イチゴ経営は、一人10aを目安として、現在、83歳の父と母で15a、腰を痛めた関さんは7.5aの22.5aを生産している。
品種は、「女峰」から「とちおとめ」へと代え、「とちおとめ」が20年で品種登録が切れたため、栃木県では「とちあいか」の生産が始まった。「とちあいか」は「とちおとめ」と比べて収量が10%多い。来年から「とちあいか」も生産を始める。
イチゴ栽培の流れは、まず、前年にイチゴ農家が集まり苗作りをJAおやまで共同でやる。この作業はボランティアだ。前年11月ごろJAからポケット苗(1000本/ウィルスフリ-)を1本140円で1000本を購入する。他のウィルスフリ-苗よりも安いのは前年のボランティアを考慮されているからだ。この苗をハウスの横の育苗ハウスで、親苗として育て、来シーズンの収穫に使う。3月20日に公設ベンチのロックウォールに親株を定植、4月から7月にかけて子苗を増殖させ、7月から8月ごろに子苗を切り離し育苗し、9月ごろにハウスに定植すると、11月から翌年5月までが収穫時期となる。
イチゴは、毎年、クリスマス時(12月)は高くなる。夏に低温処理をしない普通栽培では、無理をしないとその時期に多く出荷できない。関さんは最も寒い時期(1月、2月、3月)に安定して出荷することを目指している。
販売は全量JA 出荷で、前日収穫・予冷し、翌日11時までにJAに出荷する。
関さんは50年前に両親が始めたイチゴ経営を承継したのだが、イチゴの作り方は、父親の作り方とは違っているとの事だった。父親はなかなか当時の作り方が変えられないようだが、イチゴ作りについては、お互いに干渉しないとの事だ。この関係は徹底していて、イチゴのハウスも箱詰め作業も関さんと両親は別々になっている。
<100人の農家がいれば100人の栽培方法があるのだ>
この考えは、関さんの農業観に繋がっていると思える。関さんに農業への考え方について聞いてみると、
- 自分は人生を楽しみたいから農業をやっている。自分はスポーツはもちろん車もバイクもが好きで、先日も筑波サーキットを走ってきた。こんなことができるのは、農業をやっているからこそです。
- 農業は自分が主役になれる。しかし、農業で一人500万稼ぐのはかなり大変なことだ。また、一人だけで仕事をすることは難しく家族で協力して行う必要がある。農業は金儲けとは相性が悪い業種だ。
と語ってくれた。
ハウス内でナノバブルについて質問した。関さんによると、
- ナノバブルは根の張りが良く、収量が増えて儲かったので、現在も導入している。なぜ、収量が増えたかと言えば、ナノバブルで根が元気になり、多くの肥料を吸収するからだと思う。今年は、控えていた元肥を多くする予定である。
- ナノバブルはすべての苗で効果があるが、苗の個性により効果に差がでると感じている。使う農家によっても効果は異なると思う。しかし、ポテンシャルはあると思うので、健全な苗、根を作るため、自分は、今後も使っていくつもりだ
と答えてくれた。
稲田宗一郎(いなだ そういちろう)