2023/12/20 | インタビュー |
【千葉県】高温対策技術としての酸素UFB灌水の可能性
梨生産量全国第1位の千葉県の中でも、最も生産量の多い白井市で、就農50年の梨農家。
白井市梨業組合は勉強会に加え、年代別の研究会を立ち上げて栽培ノウハウを共有し、梨の品質向上に努めている。
昔からの栽培方法を大切にしながらも、新しい技術に取り組んでいる。
なぜウルトラファインバブル(UFB)を導入されましたか?
最初のご縁は、ガレージハウス。
当初、倉庫の建築をお願いし、その時の担当者が後にウルトラファインバブルの事業に携わることとなり、それ以降取引が始まった。
最初に「試験的に導入してみることはいかがでしょうか?」という提案を受け、「とりあえずやってみよう!」と半信半疑の気持ちで使用を開始した。
ウルトラファインバブルの効果はいかがでしたか?
UFB水を点滴灌水したUFB水散布区と、原水を用いた慣行区に分けて検証を行った。
葉を調査したところ、UFB水散布区の方が葉に厚みがあり、葉脈も太かった。
葉の葉緑素を表すSPAD値を計測したところ、UFB散布区の方がSPAD値が高い傾向が見られた。
また、落葉の時期が慣行区より遅くなった。
他の圃場から視察に来た人から、「何かやっている?」「葉の大きさや色がいいよね。」「栄養剤やっている?」と言われるようになった。
肥料吸収に関してはどのように考えられていますか?
東京農業大学に落葉した葉の成分分析をしてもらったところ、酸素UFB灌水と葉面散布を行っているエリアの葉において、葉の窒素成分が高かった。
樹が健康になったことで、窒素以外の養分も吸えているのではないかと感じた。
また、実に関しては1年やってみて、豊水における「うるみ(みつ症)」の発生が半分くらい減っていることに気がついた。
収穫していても、違うなと感じた。
「うるみ」というのは、リンゴで言えば「みつ症状」のこと。
リンゴと違い、梨は実が柔らかいため、みつ症状が現れると廃棄しなければならない。
カルシウムの欠乏が原因で起きると言われている。
UFBを導入する前は、ひどいときは半分近く「うるみ」で捨てた時もあり、「豊水の栽培をやめようかな?」と思う時もあった。
異常気象と言われればそれまでだが、異常気象を乗り越えられなければ、作物を生産しても意味がない。
実際に、3年目に「うるみ」の発生個数を数えたところ、慣行区においては、うるみ発生が100個中20個(20%)だったのに対し、UFB散布区では、うるみ発生個数は100個中6個(6%)だった。
また、SPAD値でこれだけ差が出ているということは、葉がより健康で丈夫になっているということであり、カルシウムの吸収も良くなっていると考えられる。
それによって、梨の実の細胞壁が強化されていることで、「うるみ」の減少に繋がったのではないかと推察される。
今年は特に異常気象で暑く、「豊水」だけでなく、「王秋」や「あきづき」も褐変という果肉障害が全国的にでていたので、そういった症状への対策にも繋がっていくのではないかと思っている。
高温対策技術としての酸素UFB灌水の可能性について教えてください。
ソーラーパネル発電型のUFB発生装置を点滴灌水に使っているが、2023年のように雨が全然降らない年に、必要な時に水を撒くことができて、非常にありがたかった。
UFBが入っていない圃場においては、自らホースを引いて灌水しなければならず、作業負担が非常に大きかった。
作業の効率性の面からも、導入していたことで今年のような猛暑に対応することができ、非常に助かった。
あらかじめ点滴灌水チューブなどを果樹棚に這わせ、必要なときに灌水がすぐにできる設備を構築しておくことは、急な気温や温度変化にも柔軟に対応でき、高温の被害を軽減するためには有効と考えられる。
ホースも含めて補助金などを使って導入できると生産者としては非常にありがたいと思う。
今後の検証について
梨という農作物は、即効的な成果が得られない。
継続的な取り組みが必要であり、その結果が現れるまでには時間がかかることもある。
しかし、UFBを導入をしてみて「うるみ」やモンパに対する有益な効果が徐々に現れてきている。
これから先が非常に楽しみな技術だと思っている。
現在、気候変動により、梨の生育が困難になってきている。
今年は果肉障害にも悩まされた年だったが、UFBでこういった課題に対処できる可能性があると考えている。
今後も共同研究を進め、果樹におけるUFB技術の検証と実用化に向けた探求を続けていきたいと考えている。
温暖化への対応や生産性向上において、この技術が解決策となり得ることを期待している。