2020/03/26 | レポート |
【愛知県】サンチュ栽培でのウルトラファインバブル導入事例(定点観測結果あり)
今回ご報告するのは、愛知県豊橋市の農家W様の事例です。
W様は水耕栽培歴40年という経歴の持ち主。以前はネギを栽培していましたが、約20年前にサンチュの栽培に切り替えたといいます。サンチュは一年を通して出荷されており、千葉県が生産量国内第1位(78%)、次いで愛知県が第2位(13%)となっています。
W様の農場の特徴は、土耕栽培が多い愛知県で水耕栽培を行っている点です。水耕栽培は作業が楽で、根の温度管理や肥料のコントロールがしやすい一方、病気などの影響を受けやすいという面もあります。また、1年を通して安定した出荷をすることが重要なため、生育状態を見ながら、ベッドごとに定植タイミングを変えています。
栽培総面積は60A。そのうち45Aでサンチュを栽培しており、さらにそのうちの7.5Aの面積でウルトラファインバブルを導入しています。下記のような効果に期待を寄せていただいています。
・年間を通じて安定した収量を確保する
→サンチュは一般的に積算温度1,700℃(例:35℃×48日)で花が咲くため、1サイクルが短い。
・病気(主にべと病・ピシウム菌)によるロスの低減
→夏場のロス40%を10%〜20%ほどに抑えたい。
ウルトラファインバブル導入後に見られた変化と課題
サンチュは夏季であれば定植から1.5カ月ほどで収穫が可能です。2019年4月にウルトラファインバブルを導入し、どのような変化が見られたかをご報告します。
・根の張りが良好
W様からは「例年に比べ、根が白く、長い気がする」という感想をいただいています。なお、「本年から葉に色を付けるため肥料にマグネシウムと鉄を増やしたことも影響しているかもしれない」とも分析されています。
・茎の太さは例年通り
夏場は成長が早く茎も細くなる傾向にあり、ウルトラファインバブル導入後も例年と比べて目立った変化は見られませんでした。
上記のような結果が得られた理由として、水の管理、肥料、溶存酸素量の三点が影響していると考えられます。それぞれどのような状況だったか、また今後どのように対応していただくかを検討しました。
①水の管理について
【今作の実績】
・水量=5トン×8ベッド(1ベッド25m)=40トン
※45分で一巡する循環システムの100リットルタイプを導入。12時間稼働。
・水温=朝27℃、昼28℃、夕方27℃、夜26℃で管理。
【今後の対応】
引き続き1ベッド12時間循環を続けていただく
②肥料について
【今作の実績】
・EC値は1.4〜1.8で管理
これまでの1.0前後からアップ→収量増加
・前述の通り、葉の色付きを上げるためにマグネシウムと鉄の量を増やした。
【今後の対応】
定期的な水質調査の結果をもとに施肥を行うため、ウルトラファインバブル使用区・未使用区の施肥量の比較をしていただく。
③溶存酸素量について
【今作の実績】※2019年7月測定
溶存酸素量を計測した結果
源水(豊川用水)8.5> 慣行区7.5 > NB使用区7.0
キャビテーション(液体の加減圧による変化)現象により溶存酸素が上がらない
【再計測結果】※2019年12月測定
源水(豊川用水)12.55 > NB使用区5.75
→変わらず溶存酸素が低いため、酸素注入量が多くなるよう調整
ウルトラファインバブルの有無で変化は? ハウス内で定点観測を実施
ハウス内をウルトラファインバブル使用区(2019年10月上旬定植)とウルトラファインバブル未使用区(同10月下旬定植)に分けて、2週間に1回のペースで定点観測を実施しました。どのような変化が見られたかをご報告いたします。
【定植から24日後】
・ウルトラファインバブル使用区の方が、葉のボリュームがあり色付きが良い
・収穫量に大きな違いは見られない
【定植から34日後(使用区)、39日後(未使用区)】
・ウルトラファインバブル使用区の方が、葉のボリュームがあり色付きが良い
・使用区の方が根の張りが良い
・収穫量に大きな違いは見られない
【定植から51日後(使用区)、49日後(未使用区)】
・葉・根ともにどちらの区でも違いが見られなくなった
・収穫量にも大きな違いは見られない
【定植から62日後(使用区)、66日後(未使用区)】
・葉・根ともにどちらの区でも違いが見られなくなった
・未使用区の方が茎が垂直になっていないように見えるが、誤差の範囲
・収穫量にも大きな違いは見られない
以降、引き続き観測中です。
仮説のまとめと今後実施する行動予定
仮説①
ウルトラファインバブルの有無により養分の吸収量が違う可能性がある。特に水温が下がる時期はリン酸が吸収されにくい。
行動:定期的に行う水質調査でのリン酸の値や、肥料の使用量の違いに注目する。
仮説②キャビテーション効果によりベッド内の溶存酸素量が低く、十分な量の酸素が行き届いていない。
行動:酸素注入量を上げてウルトラファインバブル使用区の溶存酸素量を未使用区と同数値以上にし、違いが出るか検証する。
仮説③わずかながらウルトラファインバブルの有無で作物状態に違いが感じられる(葉のボリューム・色・根の張りなど)
行動:引き続き2週間に一度の定点観察を実施し、収穫回数・時期の比較を行う。
今後も定点観測を続けながら、課題となっている点が改善されるよう努めてまいります。対応策実施後に変化が見られた際には改めてご報告いたします。